夏本番前の今だから…すぐに始めよう暑熱順化!熱中症の予防と対策
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こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の原田です。
夏目前、今年の夏も暑いという予報が出ていますが、みなさん、熱中症対策を始めていますか?
熱中症は毎年7月から8月にかけて多く発生しています。特に梅雨開けの蒸し暑く、急に暑くなる7月には体が暑さに慣れていないため、熱中症による救急搬送者数や死亡者数が急増します。また、近年は4月頃から夏日になる日があったり、暑さに慣れる間もなく急に暑くなったりと、気温の上がり方も変わってきています。そうすると身体が暑さに対処しきれずに、熱中症になる危険性が高まります。
だからこそ暑くなる前から熱中症対策を行うことで、熱中症のリスクを下げることが大切。今回はそんな熱中症についてお話したいと思います。
熱中症とは
そもそも熱中症とはどのような病気なのでしょうか?
私たちの体は血管を広げて外気に体内の熱を放射したり、汗をかいて蒸発させたりして体温の急激な上昇を防いでいます。しかし、気温が高いと体内の熱は放散されず、湿度が高いと汗は蒸発しません。
熱中症とは高温多湿の環境に長く留まった結果、体内の水分や塩分(ナトリウム)などのバランスが崩れ、体温の調整がうまくいかなくなることで起こる様々な症状の総称です。 めまい、失神、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、痙攣(けいれん)、手足の運動障害、高体温等の様々な症状が現われます。
熱中症の分類と症状
先ほど熱中症は様々な症状の総称と説明しましたが、どのような症状があるのか見ていきましょう。
熱失神
暑熱環境下で皮膚血流の著しい増加と多量の発汗により、相対的に脳への血流が一時的に減少することにより起こる失神。
<症状>
◎めまい
◎一時的な失神
◎顔面蒼白
◎脈が速く、弱くなる
熱けいれん
汗で失われた塩分(ナトリウム)が不足することにより生じる筋肉のこむら返りや筋肉の痛みのことです。
<症状>
◎筋肉痛
◎手足がつる
◎筋肉の痙攣
熱疲労
汗を大量にかき脱水が進行して補給が追いつかず、全身のだるさや集中力の低下した状態をいい、頭痛や気分の不快、吐き気などが起こります。放置しておくと、致命的な「熱射病」に至ります。
<症状>
◎全身倦怠感
◎悪心・嘔吐
◎頭痛
◎集中力や判断力の低下
熱射病
体温が上昇することで、中枢神経症状や腎臓、肝臓機能障害、さらには血液凝固異常まで生じた状態のことで、意識障害などが現われます。
<症状>
◎体温が高い
◎意識障害
◎呼びかけや刺激への反応がにぶい
◎ふらつく
ひと言で熱中症といっても、様々な症状があるんですね。実際に熱中症が発症した際には、これらの状態が混在するので、熱中症が発生したときには、重症度に従って下の表のように、最近では軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類しています。
熱中症になりやすいのはどんな人?
熱中症には誰もが注意する必要がありますが、その中でも特に熱中症を起こしやすい年代があります。
男性:0~4歳、15~19歳、55~59歳、80歳前後
女性:0~4歳、80~84歳
にそれぞれピークがあります。
乳幼児や高齢者は体温調節の機能が未発達もしくは衰えることで、熱中症のリスクが高いと考えられます。また、10代~60代では男性の方が熱中症で亡くなる割合が高くなっています。これは、男性の方が青年期の部活動やスポーツでの運動強度が高く、中年期にかけては仕事による身体のへの負担が大きいためだと考えられます。
自分はまだ若いから、普段から身体を動かしているから大丈夫!という男性、多いのではないでしょうか?注意して生活しないと、実は熱中症リスクが高いかもしれませんよ。
熱中症かな?と思ったら
熱中症にならないことが一番ですが、もしも自分が熱中症かな?と思ったら、熱中症らしき人がいたらどうすれば良いのでしょうか?
涼しい場所へ移動する
まずはエアコンが効いている室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ移動しましょう。気温30℃の場合、日向と日陰はどちらも気温は同じ30℃ですが、日向では頭上からの日射に加え、50℃近くに高温化した歩道や車道からの放射熱が足元を包みます。一方、木陰では、頭上は葉っぱが約30℃、足元の歩道は約32℃となります。頭上も足元も皮膚の温度より低いため、体からの放熱が進みます。木陰に入ると涼しさを感じるのはそのためです。
体を冷やす
衣服をゆるめ、特に首の周り、わきの下、足の付け根などを冷やしましょう。ここには太い動脈が通っており、冷やすことで、冷やされた血液が全身を素早く回り、早期に体温を下げることができます。
水分補給
水分・塩分、スポーツドリンクなどを補給しましょう。以前、ランナーのための水分補給のブログの中で、スポーツドリンクには「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」があることを紹介しました。
アイソトニック飲料は人の安静時の血液や体液とほぼ同じの濃度の糖分とミネラルを含む飲料です。熱中症の予防として前もって飲むのであれば、こちらの方が良いでしょう。
ハイポトニック飲料は人の血液や体液よりも低い濃度の糖分とミネラルが含まれており、安静時の人の体液より浸透圧が低く、吸収が早いのが特徴。もし、運動時や屋外活動の際に熱中症かな?と思ったらハイポトニック飲料がおすすめです。
「熱中症かもしれない」という場面に遭遇したけど、ハイポトニック飲料がない!という場合には、アイソトニック飲料を水で少し薄めて飲ませることで、吸収を早めることができますよ!
代表的なアイソトニック飲料とハイポトニック飲料は以下のようなものがあります。
アイソトニック飲料:ポカリスウェット、アクエリアス、ゲータレードなど
ハイポトニック飲料:アミノバイタル、ヴァームなど
自力で水が飲めない、意識がない場合はすぐに救急車を呼びましょう!
暑くなる前に暑熱順化で熱中症対策!
暑熱順化ってなんだろう?
「暑熱順化(しょねつじゅんか)」という言葉を聞いたことがありますか?暑熱順化とは「暑さに慣れる」ということです。暑い日が続くと、体が次第に暑さに慣れて、暑さに強くなります。暑熱順化がすすむと、発汗量や皮膚血流量が増加し、発汗による気化熱や体の表面から熱を逃す熱放散がしやすくなります。逆に暑熱順化できていないと、熱放散が上手くいかず、上がった体温が体の中に留まり、熱中症になりやすい状態になってしまいます。
暑熱順化を実践しよう!
暑熱順化には、実際に気温が上がり熱中症の危険が高まる前に、無理のない範囲で汗をかき、身体を暑さに慣れさせることが大切。
日常生活の中で、運動や入浴をすることで、汗をかき、体に暑さに慣れさせましょう。暑熱順化は個人差もありますが、数日から二週間程度かかります。暑くなる前から余裕をもって暑熱順化のための動きや活動を始め、暑さに備えましょう。
「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で毎日30分程度の運動が推奨されており、屋外ではウォーキングやサイクリングがおすすめです。室内でも出来ることとしては、筋トレや入浴もあります。 暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程度で完成すると言われています。
ちなみに暑い場所で働くと言えば、真っ先に浮かぶのが消防士さんですが、消防士の方々は毎年5月~6月になると訓練の中に「暑熱順化トレーニング」が組み込まれるそうですよ。
暑くなってからの熱中症予防
暑くなる前の暑熱順化のお話をしましたが、夏本番を迎えてからの対策も重要です!
高温・多湿・直射日光を避ける
熱中症の原因の1つが高温と多湿です。屋外では、強い日差しを避け、日傘や帽子を着用しましょう。屋内では迷わず扇風機やエアコンを使用する、風通しを良くするなど、高温環境に長時間さらされないようにしましょう。
計画的かつ、こまめに水分補給
コロナ禍でマスクを常時つける習慣がついてきました。マスクをしていると、のどの渇きを感じにくくなるため、早めに水分補給するよう心掛けましょう。外出する際は、外出前から水分300~500mlを約1時間かけてゆっくり飲みましょう。
運動時などは計画的な休憩をする
学校での体育祭の練習、部活動や試合中などの集団スポーツ中に熱中症が発症していることから、実施する人はもちろんのこと、特に指導者等は熱中症について理解して、計画的な休憩や水分補給など、熱中症を予防するための配慮をしましょう。
規則正しい生活をする
夜更かし、飲酒、食事を抜くなど不規則な生活により、体調不良な状態では熱中症のリスクが高まります。
乗用車等で子供だけにしない
幼い子供は体温調節機能が未発達です。車内の温度は短時間で高温になります。少しの間でも、子供を車内に残さないようにしましょう。
屋外でソーシャルディスタンスが確保できるときはマスクを外す
マスクを着けると皮膚からの熱が逃げにくくなったり、のどの渇きを感じにくくなり、気づかないうちに脱水になるなど、体温調整がしづらくなってしまいます。運動や屋外作業で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクを外すようにしましょう。
まとめ
熱中症のことわかっていただけましたか?前もって暑熱順化を行うことや適切な水分補給などで熱中症は防げるんですね。しかし、乳幼児はご両親や周りの大人のサポートなしには熱中症は防げません。また、ご高齢の方は「昔はエアコンなんて使わなくても大丈夫だった!」「窓を開ければ大丈夫!」と「昔の感覚」で夏を過ごしがち。平均気温が上がりつつある今の気候に対応できずに熱中症というパータンも多くなってきています。自分自身だけでなく、周りのサポートも熱中症予防には不可欠です。声を掛け合って、楽しい夏を過ごしましょう!
スリーウエルネスでは健康のトータルサポートを行っています。トレーニングの際に水を必ずお客様にお渡しし、トレーナーが随時水分補給を促しながら、安全にトレーニングを行っています。この夏も健康のため、熱中症対策のため、運動習慣を一緒に身につけませんか?
スリーウエルネス理学療法士 原田
<参考サイト>
消防士のための暑熱順化トレーニングの有用性
消防隊員が行う暑熱順化トレーニングの具体的方策に関する検証
厚生労働省:熱中症予防のための情報・資料サイト