コーレス骨折・スミス骨折ってどこの骨折?理学療法士がリハビリと治療について解説!
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こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の原田です。
梅雨に入り、じめじめした日が続いています。雨が降ると路面が濡れ滑りやすくなり、転んでしまったという経験のある方も多いのではないでしょうか?転倒によって引き起こされる怪我の中で多いのが「骨折」です。
人が転倒した時に折れやすい骨というのがいくつかあります。今回のブログではそんななかでも「コーレス骨折」、「スミス骨折」について解説します。 コーレス骨折、スミス骨折という名前を聞いて、どこの骨折かわかりますか?名前すら聞いたことのない方がほとんどだと思います。コーレス骨折、スミス骨折について詳しく見ていきましょう!
コーレス骨折・スミス骨折ってどこの骨折?
コーレス骨折、スミス骨折ともに、「橈骨遠位端(とうこつえんいたん)」と言われる場所に起こる骨折です。橈骨遠位端とは、いわゆる手首のこと。
高齢者に多い骨折ですが、若い方でもスノーボードやバイク事故などで折った経験のある方がいるのではないでしょうか。受傷後は痛みが強く、腫脹(腫れ)が現れます。また、関節の動きが制限され、骨折がひどい場合、ずれて変形してしまうこともあります。
前腕には橈骨と尺骨と呼ばれる、2本の骨が並び、端と端で関節を作っています。コーレス骨折とスミス骨折はともに橈骨の骨折ですが、転倒の際にどのように手をつき、橈骨がどのように折れたか(転位したか)で呼ばれ方が変わります。
コーレス骨折は転んで手の平から着地し、手首が反って起こる骨折です。手首付近で橈骨が骨折した際、折れた橈骨の下端側の骨片が手の甲側にずれた骨折です。 スミス骨折は転倒時に手の甲側に地面につき、手首側が曲がって起こる骨折です。この場合、折れた橈骨の下端側の骨片が手首の手のひら側にずれます。
橈骨遠位端骨折の発生率
40歳未満では、男性の発生率は女性よりも1.4倍多いのですが、40歳以上では女性が男性より多くなり、女性の発生率は加齢にともなってほぼ直線的に増加すると言われています。60歳以上の女性の14.5%はその後の生涯の中で橈骨遠位端骨折を経験するという報告もあります。
橈骨遠位端骨折の合併症
骨折はただ痛いだけではなく、折れ方によっては、手根管(しゅこんかん:手首にある骨と靭帯に囲まれた空間。指を曲げる腱と神経が通過する)を圧迫し、「正中神経(せいちゅうしんけい)」に麻痺を引き起こしてしまうことがあります。正中神経麻痺が起きると、親指や人差し指、中指に痛みやしびれ、時には運動麻痺が起こります。
橈骨遠位端骨折の治療法とは?
ギプス治療
軽度であれば、ギプス固定で治療することが可能です。部分麻酔をした上で画像検査装置の下で骨の形を整え、ギプスで固定します。基本の固定は肘下から手のひらまで。固定期間は4~6週程度です。固定にかかる所要時間は20分程度で、手指を動かすことは可能ですが、手首を動かすことはできません。
手首を骨折した場合のギプス固定は手首が動かないように固定し、指や肘は動くようになっています。ギプス固定したからといって動かせる指や肘、肩の関節まで全く動かさなくなってしまうと、それらの関節や腱まで固まってしまいます。そのため、ギプスが外れ、いざ動かそうとすると指の関節も固まってしまい、リハビリが遅れる場合があります。
また、ギプスにより関節が固定されることで、血液の循環が悪くなり、むくむことが少なくありません。むくみを放っておくと関節が固まりやすくなり、その後のリハビリを邪魔する原因になってしまいます。 他の関節が硬くならないように、むくまないようにするためには、ギプス固定をしている間から痛みのない範囲で「動かせる部分は動かす」ことが大切になってきますよ。
手術治療
徒手整復(としゅせいふく:骨折箇所を手で元の形に戻すこと)しても上手く整復できない場合や、整復してもすぐに骨折部位がずれてしまう場合、また骨折端が手首の関節に影響を与えている場合などは、全身麻酔での手術が必要となります。手術で正確に骨片を整復し、プレートやスクリューなどを使ってしっかりと固定します。
橈骨遠位端骨折のリハビリ
ギプスでの固定での治療の場合でも手術した場合も動かせる部分はしっかりと動かすことが大切です。しかし、骨折直後、手術後は痛みが伴うので無理にリハビリをするのは禁物。
痛みがあるときに無理をすると症状が悪化したり、合併症を引き起こす可能性があります。専門家によるリハビリでは痛みをうまく調整しながら行いますが、家庭で行う場合は、動かしたときに痛みが出る範囲を見定め、痛みが出ない範囲で行いましょう。
手首の骨折では安静にしていてもズキズキ痛む、骨折した部分以外の広い範囲で痛みがあるといった症状がみられる場合、合併症の恐れがあります。少しでも異常を感じたら必ず、医師の診察を行い、医師の指示があるまでは決して無理をしないようにしましょう!
高齢者でも自宅でできる!ギプス固定中でも行いたいリハビリ
ギプス固定中に手を動かさないことで起こる悪影響を予防するために、自宅でも行えるリハビリを紹介します。
骨折している側の手を心臓より高く上げる
循環が悪くなって起こる、むくみの対策として、骨折している側の手を心臓の高さより上にしましょう。そうすることで、固定している部分の周辺に滞った血液が、心臓まで戻りやすくなり、むくみの軽減、悪化予防になります。運動などで一時的に手を上げるより、生活の中で手を上げる時間を確保していく方が有効です。例えば、テレビを見るときにテーブルなどの上にタオルをおいて心臓より高い位置にしたり、寝ている時にクッションを敷いたりといった工夫ができます。
ギプスから出ている指の運動をしよう
手首の骨折でギプス固定をする場合、指は固定せずに動かせるようになっています。固定されていない指を動かすことで、むくみの解消、関節の固まりを防ぐ、腱の癒着を防ぐといった効果があるので、しっかりと動かしましょう。
- 全体の指をしっかり伸ばす。
- 指の付け根の関節だけ、曲げる。(第一、第二関節は伸ばしたまま)
- こぶしの部分の関節は曲げず、指の第一関節と第二関節を曲げる
- 指の関節を全て曲げて握りこぶしを作る
- 指を横に広げたり、閉じたりする
- 指で輪っかを作る(オーケーサインを全ての指で作る)
単純な動作ですが、様々な手の動きが含まれる運動ですので、時間があればできるだけ、しっかり行いましょう。(痛みがある場合は中止してください)
肩や肘の運動
手首を骨折して、肩や肘を怪我していなくても、ギプス固定中に動かさなければ、関節が固くなってしまいます。そのため、肘の曲げ伸ばしや肩回し、バンザイの動作など、肘や肩の運動を行うことが重要です。
肩の運動までは心臓より怪我をした部分を高く上げることになるのでむくみの予防にもなります、指の運動と同様に時間がある時はできるだけ、動かすようにしましょう。 (痛みがある場合は中止してください)
ギプス固定中でもできるリハビリはたくさんありあります。処置をしてもらった医師と相談しながら、出来る限りリハビリを継続しましょう!
まとめ
手首の骨折のリハビリ、ご理解いただけましたか?基本的には固定している間から「動かせるところは動かす」が基本になります。痛いから、ケガをしたからと過度に安静にすることは、かえって状況を悪化させることにもなりかねません。しっかりと身体を動かしましょう!
また、手首の骨折は転倒をきっかけに起こることが大多数。予防のためには転倒予防の運動が必要不可欠です。転倒予防に関してはこちらのブログに詳しく書いています。ぜひご覧ください! 日頃から運動を取り入れ、怪我をしない身体作りを行っていきましょう!
スリーウエルネス理学療法士 原田
(参照)
OGスマイル/「高齢者に多い手首の骨折!ギプス固定中でもできるリハビリの方法を理学療法士が解説します」
https://ogw-media.com/smile/cat_rehabilitation/2052