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トレーニング&ケア

2022.06.22

痛みや不調を温めて改善!温熱療法について理学療法士が解説!

こんにちは!理学療法士の末廣です。

梅雨入りし、雨音も心地よいですが、青空が恋しいですね。雨が続くと、頭痛や関節痛、肩こりなどのいわゆる「天気痛・気象痛」でお悩みの方、多いのではないでしょうか。この天気痛、実に日本人の約6割、女性に限れば8割の方に何らかの自覚症状があるという統計データがあります。

そんな痛みや不調に対して「温める」と症状が軽くなったという経験はありませんか?今回は身体を温め、症状を緩和する「温熱療法」についてお話します。温めることで体の中に起こる変化や温熱療法の効果、種類、使用機器の特徴を詳しく解説します!

温熱療法ってなんだろう

皆さんは温熱療法と聞くとどんなものを思い起こしますか?
病院や整骨院で肩や腰にホットパックを当ててもらった経験のある方なんかは何となく想像がつきますよね。

温熱療法とは皮膚や皮下組織、筋肉などの組織に、体表から熱を加えたり、電磁波・超音波などのエネルギーで深部組織の温度を上昇させて生体反応を引き出し、それを症状改善に活用する治療法です。物理療法の中のひとつに分類され、病院や整骨院などでよく行われている治療法です。
また入浴で温めると疲労の回復につながるとよく耳にしますよね。これも温熱療法の一種と言えます。

このように比較的接することの多い温熱療法。温かいと気持ちが良いですし、なんとなく痛みも軽くなるような気がします。では体を温めると体の中ではどのような変化が起こっているのでしょうか。

人間の身体の体温調節機構

温熱療法についてお話する前に、人間の身体はどのように体温を調節しているのか見てみましょう。人間の体温調節の仕組みを知ることで、温熱療法への理解がより深まりますよ。

人間は恒温動物で、体の中心部の体温は常に約37度に保たれています。これは全身にある温度を感じ取る温度受容器や脳の視床下部にある体温調節中枢、筋肉や肝臓・皮膚の血管や汗腺などの体温調節効果器が連携し、周りの温度や気温に合わせて体の熱を産生や放散し、体温が一定に保たれるよう調節する働きによるものです。

気温の上昇や入浴などで、身体の広い範囲が温まり、「暑い」と感じると、血管が拡張して発汗を促し、熱を放散しようとします。また、体が温まることで、細胞の活動が活発になり、代謝が向上し代謝産物を排出するために血流量が増加し、心拍数が増加します。その他にも、肺で熱くなった息を吐きだし、熱を逃そうという働きがおこり、呼吸数が増加します。風邪をひいて熱が出たときに、呼吸が早くなるのはこのためなんですね。

それとは逆に身体の広い範囲が冷やされ、「寒い」と感じると、末梢の血管が収縮し熱の放散を抑制し、深部体温が低下するのを防ぎます。ブルブルと震えるのは筋肉が痙攣し熱を作り出そうとするため、鳥肌が立つのは毛穴をふさぎ体温の放散を防ぐためです。また寒い日に運動すると咳き込むことがあるのは、呼吸による熱の排出を防ごうと気管支が細くなるためです。

このように体温を一定に保つために身体は様々な生体反応を示しているんですね。

温熱による体の中の変化

このように温冷刺激に対して身体は様々な生体反応を示します。これら反応を利用し、痛みや不調などの症状の緩和を行うのが温熱療法です。では温熱刺激によって体の中でどのような変化が起きているのか見ていきましょう。

代謝が亢進する

温熱療法により組織の温度が上昇すると細胞の活動が活発になり、代謝機能が活性化されます。

血管の拡張と血流量の増加

熱を加えると、温められた部位周辺の血管が拡張します。また、血液自体も粘性が低下し、サラサラになるので流れやすくなり、血流が増えます。皮膚や血管内に損傷があると、血管の拡張作用により損傷個所が開き、再出血することも考えられます。ケガをしたり、傷があるときに温熱療法を用いないのはこのためです。

筋肉や靭帯(じんたい)・関節の変化

緊張するとギュッと力が入ってしまうことがありますが、温めることで余分な力が抜け、筋肉を緩めることができます。これは温められると筋肉に力を入れるように指示をする神経の働きが弱くなる作用があるためです。また、筋肉自体も温めると柔らかく伸び縮みしやすくなると言われています。寒いときより暖かいときにストレッチすると伸びやすいと感じるのはこのためです。

靭帯や腱、関節を包む組織も温めることで伸張しやすくなりますが、その温度は45℃と言われています。ヒトの皮膚に直接充てると低温やけどするおそれのある温度なので、深部のみを温める温熱療法の方が適しています。

免疫機能の亢進

免疫とは、ウイルスや細菌などの異物が体内に入り込んだときに体から取り除く様々な仕組みのことです。ウイルスや細菌などの病原体の多くは低温で増殖する特徴があります。また、免疫細胞は体温が1℃上がると最大5~6倍活性化すると言われています。風邪ひいたときに発熱するのは、熱によってウイルスの増殖を抑制し免疫細胞である白血球(T細胞や好中球)の働きを活性化して体を守りやすくするためなんですね。
このことから、体を温める温熱療法は免疫力向上が期待できます。

温熱療法には温められて気持ち良いだけでなく、体の中では様々な反応が起きているんですね。

実際の治療の際には上の図のように、これらの生体反応を踏まえ、痛みの軽減(代謝の促進や筋肉の緊張緩和)、循環の改善関節可動域の改善創傷治癒の促進(血流増加による栄養分供給の増大、組織の新陳代謝の促進、細胞の活性化など)など、目的を明確したうえで温熱療法を行います。

表面から温めるか、深い場所を温めるか

温熱療法は大きく、表在温熱療法(皮膚など表層を温める)と深部温熱療法(骨・関節・筋肉などの深部を温める)の2つに分類されます。

上の図のように温熱を加えたい場所や目的によって、使用する機器や方法が変わってきます。

温熱療法機器の種類と特徴

温める場所が表層か深部かで、使用する機器が変わることは理解いただけましたね。ここからはよく用いられる温熱療法機器の使用目的と仕組みを見ていきましょう!

表在温熱療法機器

(ホットパック)
ホットパックは多くの病院や整骨院で使用されている表在温熱療法機器の代表のような機械です。パックを温水で温めたり、電気を流して温めたりして皮膚表面に当て、体表から温めます。水分を含んだ「湿熱方式」とビニールで包んだり、電熱式のものを用いる「乾熱方式」の機械ががありますが、効果に大きな差はなく、取り扱いのしやすさから乾熱ホットパックを利用している施設が多い印象です。スリーウエルネスではOGWellness製の乾式ホットパック「KT-641」を使用しています。

筋肉が張り生じた痛み(肩こりなど)や慢性的なむくみ、冷え性など軽度の末梢循環の血行不良などが適応となります。また、電子レンジなどで温めて使える家庭用ホットパックも市販されています。

深部温熱療法機器

(極超短波(マイクロ波)機器)
患部に電磁波の一種の極超短波(マイクロ波)を当て、関節や筋肉など比較的体の深部を温めることができます。機械を直接身体に当てずに服の上からでも、体の深部まで温められるのが特徴です。スリーウエルネスではOGWellness製のマイクロ波治療器「ME-9250」を使用しています。
※マイクロ波は金属を発熱させるので、使用中は貴金属を外す必要があります。また金属繊維を含む衣服の上からは使用できません。ご注意ください。

変形性関節症やリウマチ、肩関節周囲炎など慢性的になった関節の痛みや腰痛、腱鞘炎などの筋膜性疾患、神経痛などが適応になります。

(ラジオ波機器)
ラジオ波機器も患部に電磁波の一種のラジオ波を流し、関節や筋肉などの比較的に身体の深部を温めます。こちらはマイクロ波機器とは違い、皮膚に直接電極を当て、電極から体の中にラジオ波を流す必要があります。マイクロ波機器が大きな範囲を温めるのに対して、ラジオ波機器は狙った筋肉や関節に絞って熱を加えられるのが特徴です。スリーウエルネスではINDIBA®activ(インディバ・アクティブ)というラジオ波機械を使用しています。

変形性関節症やリウマチ、肩関節周囲炎など慢性的になった関節の痛みや腰痛、腱鞘炎などの筋膜性疾患、神経痛などが適応になります。

電磁波で温めるとは?

マイクロ波機器もラジオ波機器も「電磁波で温める」のですが、電磁波で温めるとはどういうことでしょうか?

電子レンジ食品を加熱すると中まで温まりますよね。これは、電磁波が食品を構成している水分子を振動することによって摩擦エネルギーが生じ、内部で熱を発生させる作用を利用しています。電子レンジと周波数はちがいますが、この電磁波を人の体に用いるのがマイクロ波、ラジオ波など電磁波のエネルギーを熱に変換させて用いた温熱療法です。

(超音波機器)
超音波とは、人の聴力では聞き取ることのできない高い周波数領域の「音」です。音は空気を振動させて発生しますが、空気だけではなく、液体や個体も媒体になります。超音波を患部に照射すると、その部位の粒子に音波の振動が伝わり、広がっていきます。粒子が振動することで粒子間に摩擦が生じ温熱効果がおこります。また、粒子に「振動」という機械的な刺激を加えることで、血流増加や代謝亢進、骨や腱・靭帯などの治療促進効果、炎症の早期の鎮静化、浮腫や腫脹の治癒促進効果があるとされています

スリーウエルネスでは超音波と電気治療を同時に行えるコンビネーション治療器OGWellness製の「CT-7」という機械を取り入れています。

まとめ

ひと言で温熱療法と言っても、様々な機械や手法があるんですね。やみくもにただ温めるのではなく、「どこを、どのくらい、何を使って」温めるかによって、その後の効果に大きな違いが出てきます。

スリーウエルネスでは専門知識を持った医療国家資格保有者がひとり一人の症状や状態に合わせて機器を選択し、マッサージや筋膜リリースとあわせて温熱療法も取り入れています。

トレーニングやコンディショニング、多くの方がお悩みの肩こりや腰痛などの身体の不調にも対応しますので、是非一度相談ください!

スリーウエルネス理学療法士 末廣

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<参考サイト>
一般財団法人日本電子治療機器学会一般財団法人日本電子治療機器学会
ウエザーニュース【天気痛調査2020】

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