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トレーニング&ケア

2022.09.28

理学療法士が解説!骨盤底筋って何?骨盤底筋の基礎知識と機能低下予防

こんにちは、スリーウエルネス理学療法士の末廣です。
もうすぐ10月。過ごしやすい気候になってきましたね。秋といえば、食欲の秋・読書の秋・スポーツの秋…いろいろありますが、皆さんはどのような秋をすごされますか?

今回のブログは『骨盤底筋(こつばんていきん)』について。骨盤底筋と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?まったく聞いたことのない方もいるかもしれません。知っているという方でも、「体を支える筋肉」、「姿勢をよくする筋肉」、「尿漏れに関係する筋肉」、「体のインナーマッスルのうちの一つ」、「腰痛にも関係ありそう」など、人によって様々なイメージを持っていると思います。体のどこにあるの?どんなときに働くの?と聞かれると、あやふやな方も多いのではないでしょうか?

わかりにくい場所にあり、目で確認できず、自分で触って確認する機会も少なく、いざトレーニングしようとしても動いているかどうかピンと来ない。しかし、体にとって、とても重要な働きをしている。それが骨盤底筋です。 今回はそんな骨盤底筋のはたらきと骨盤底筋のトラブル、骨盤底筋のトレーニング方法についてお話します!

骨盤底筋ってなに?

骨盤底筋は骨盤を構成する恥骨・腸骨・坐骨の間で骨盤内臓器(子宮や膣・腸など)を底の部分で支えている小さい筋肉の集まりのこと。筋肉の集まりであるため、「骨盤底筋群」と呼ばれることもあります。

一般的な大きな骨格筋との違いは、骨盤底筋群は小さな筋肉の集合体であることと、自分の意志でコントロールできる随意筋(肛門挙筋(こうもんきょきん)や尾骨筋(びこつきん)、尿道括約筋(にょうどうかつやくきん))と、自律神経に支配されている不随意筋(括約筋(かつやくきん)や海綿体筋(かいめんたいきん))が混在していることです。

上の図は女性の骨盤底筋をお腹側から体を輪切りのようにしてみたものです。上がおへそ側、下がお尻側になります。白く空洞のようになっている部分は、上側が尿道・膣のあるところで、下側が肛門部分です。各筋肉でそれぞれ微妙に働きは異なります。排尿・排便を止めるような働きをしたり、股関節の動きに関与する筋肉もあります。これらは自分の意志で動かせる『随意筋』です。

骨盤底筋の主な働き

骨盤底筋の主な役割は3つです。

  • 骨盤内にある臓器(子宮、膀胱、直腸など)を正しい位置に保つ
  • 体幹部のインナーマッスルと共同して腹圧を保つ
  • 排尿や排便のコントロールをすること

一つずつ詳しく見てみましょう!

骨盤内臓器を正しい位置に保つ

骨盤底筋は骨盤腔(左右の寛骨と仙骨に囲まれた部分)の底を覆うように張っています。適度な張力のある骨盤底筋がハンモックのように臓器を支え、臓器が適正な位置に納まるよう保ってくれています。

体幹の筋肉と共同し、腹圧を保つ

骨盤底筋は横隔膜(おうかくまく)、多裂筋(たれつきん)、腹横筋(ふくおうきん)など体幹の深層筋(深い場所にある筋肉)とともに「体幹部のインナーマッスル」と呼ばれるユニットを構成しています。横隔膜は肋骨の下部、腹横筋は体の横側、多裂筋は脊柱の後ろ側、そして骨盤底筋が体幹の底に位置し、これらの筋肉で胴体下部の3分の2くらいを四角い箱のような形で覆っています。

この体幹部のインナーマッスルがはたらき、腹圧を保つことで、骨盤や腰椎の安定性を高めることができます。 両腕を大きく振ったり、片脚立ちでその場でバランスを保つ動作の際に、バランスを崩さず体幹を安定させることができるのも、この体幹のインナーユニットが働いてくれているからです。

排尿や排便のコントロールをする

骨盤底筋群の中には、尿道や肛門など排せつ口を開閉する働きのある筋肉もあります。骨盤底筋の一部である恥骨直腸筋は尿道、膣、直腸を恥骨の方向に引き上げ、肛門と直腸の角度を鋭角にすることで尿漏れや便が漏れるのを防ぐ働きがあります。

骨盤底筋の筋力が低下するとどうなる?

では、骨盤底筋の筋力や機能が低下した場合、どのような症状が体に現れるのでしょうか?

便秘

骨盤底筋には肛門を緩めたり閉じたりする働きがあります。衰えると肛門の開閉がうまくいかず、便を出したいときにうまく出せない機能性便秘になったり、便失禁などの排泄障害が起こりやすくなります。

尿もれ・頻尿

骨盤底筋には、尿道を緩め閉じる働きがあるため、衰えるとこの機能がうまく働かなくなり、尿もれや頻尿(腹圧性尿失禁、過活動膀胱)などの尿トラブルが生じやすくなります。

骨盤臓器脱

骨盤底筋が衰えると子宮や膀胱、直腸の位置が下がり、膣から体外に出てしまうことが。これを「骨盤臓器脱」といいます。膣からピンポン玉大のものが出てくるのが最初の自覚症状で、放っておくと、出血や排尿困難になることもあります。

ボディラインのくずれ

骨盤底筋は、横隔膜、腹横筋、多裂筋、大殿筋、内転節群など多くの筋肉と連動しているため、骨盤底筋が衰える=これらの筋肉も衰えていると言っても過言ではありません。体幹を支える筋肉が衰えることで、姿勢が悪くなりボディラインがくずれる原因になります。

気になる症状があれば、専門医に相談しましょう!

女性に多い骨盤底筋群のトラブル

骨盤底筋の筋力低下やトラブルは女性に多いと言われています。考えられる原因としては、

  • 女性の骨盤は男性と比較すると横長で、骨盤底筋が支える面積が広いこと
  • 妊娠時や出産で骨盤底筋に大きな負担がかかること
  • 更年期など加齢とともに女性ホルモンが減少し、骨盤底筋も体の他の筋肉と同様に筋肉量が減少して、筋力低下につながりやすいこと

などが挙げられます。

骨盤底筋の基本的な運動

ここまで骨盤底筋のはたらきや機能低下に付随した症状を見てきました。骨盤底筋の筋力低下を防ぐためのトレーニングってどうすればよいの?という方のために2つトレーニングを紹介します。

1つはいつでもできる体操ですので、是非やってみてくださいね!

ゲーゲル体操

体操の手順

①仰向けになり、両ひざを曲げ、足の裏は楽にマットにつけます。
両足、膝の間隔は肩幅くらいに開きましょう

②ゆっくりと呼吸をする
息を吐いたとき骨盤底筋は身体の上方へ上がります。
優しく(きつい胸式呼吸にならないように)息を吸い、それよりも長めにゆっくりと息を吐きます。お腹が呼吸に合わせてゆっくりと上下するイメージで行います。
②を繰り返して全身の力を抜いてリラックスしましょう。

③骨盤底筋群に力を入れます。
3秒維持して、5秒力を抜くのを10回繰り返しましょう。一日に3~5セット行うと効果的です。慣れてきたら、10秒力を入れて、力を抜く方法も追加してみてください。横になって行うので、朝起きた時や就寝前など、タイミングは生活のリズムの中で行うと習慣化しやすいのではないでしょうか。

後方の骨盤底筋群は、『肛門をしめる、おならを止める』ようなイメージで力を入れるとわかりやすいです。また、骨盤底筋群の前方部分を収縮させるには、『膣・尿道をしめる、排尿を途中で止める』ようなイメージで力を入れます。前側の骨盤底筋群の収縮の方が分かりにくく感じる方が多いですが、何度も繰り返してコツをつかみましょう。慣れてきたら呼吸に合わせて、息を吐くタイミングで力を入れましょう。

骨盤底筋の収縮に慣れてきたら寝て行う状態から、四つ這いで同様の動きを行ってみましょう。さらに慣れてくれば椅子に座って、最終的に足を肩幅くらいに開き立って行えるようになる徐々に負荷量があがっていきます。いろんな姿勢で行えると隙間時間にもトレーニングが行えるというメリットがあります。

ひめトレ

スリーウエルネスでは、『ひめトレ』という器具を使用し、骨盤底筋を活性化し、筋肉を緩める・収縮させるトレーニングを取り入れています。

この『ひめトレ』の上にまたがり、深呼吸したり、体を前後左右に動かします。ひめトレが骨盤底筋群に触れるため、「力が入っている感じ」が分かりやすいという方が多くいます。

まとめ

普段、意識することが難しい骨盤底筋。トレーニングするのも難しそうですが、骨盤底筋全体に収縮を促すだけでも効果はあると思います。しかし、尿漏れを改善したい、姿勢の崩れを改善したいなどそれぞれの目的によって関連性のある筋群をうまくコントロールできるようになると、より効果が大きくなると考えられます。

また女性の場合、骨盤底筋は出産時に大きく損傷すると言われています。出産直後から骨盤底筋のトレーニングを行うことで、その後の骨盤底筋の機能低下による症状を防ぐことが期待されます。 骨盤底筋の機能低下の症状に思い当たる点がある方、これらを予防したいと考えている方はぜひ今回紹介したエクササイズをやってみましょう!

スリーウエルネスでは看護師や理学療法士などの医療国家資格保有者が対応します。気になる症状があればお気軽にご相談ください。

スリーウエルネス理学療法士 末廣

<参考文献>
健康長寿ネット,インナーマッスルとは | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
健康長寿ネット,尿漏れ予防 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
山本綾子・荒木智子編著,理学療法士のためのウイメンズヘルス運動療法,医歯薬出,2017
ウイメンズヘルス理学療法研修会編集,ウイメンズヘルスリハビリテーション,メディカルビュー社,2014

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