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トレーニング&ケア

2022.09.14

理学療法士が解説!腰椎椎間板ヘルニアってどんな病気?椎間板ヘルニアの予防と改善

こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の原田です。

以前、脊柱管狭窄症のブログの中で、腰痛には原因のわかる腰痛(特異的腰痛)と原因のわからない腰痛(非特異的腰痛)があることを紹介しました。お読みいただけましたか?まだの方はこちらのブログもご覧くださいね。

さて、以前のブログの中で腰痛の中でも原因が特定できる腰痛は一部だけと紹介しました。その原因の中でも脊柱管狭窄症と並んで多いのが「腰椎椎間板ヘルニア」。脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)よりも、身近で聞き覚えのある病名だと思う方が多いのではないでしょうか?

腰椎椎間板ヘルニアの主症状といえば「腰痛」だと思っている方も多いと思いますが、発症部位や状態によっては、腰痛以外にも神経症状や排せつ障害など様々な症状が現れます。今回はそんな腰椎椎間板ヘルニアについてお話しようと思います。

ヘルニアって何?

腰椎椎間板ヘルニアの前に、「ヘルニア」ってどんな意味かご存知ですか?
ヘルニアとは、 身体の中の一部が、あるべき場所から出てきてしまった状態のことを言います。 腰椎椎間板ヘルニア以外にも、よく知られている「脱腸」も、多くの場合は、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が鼠径部(そけいぶ)の筋膜の間から皮膚の下に出てくるため、「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれています。

腰椎椎間板ヘルニアってどんな病気?

椎間板は背骨を構成する椎骨と椎骨の間に存在し、背骨に加わる衝撃を緩和するクッションの役割を担っています。椎間板はゼリー状の髄核と呼ばれる柔らかい組織と、その周囲の繊維輪(せんいりん)と呼ばれる丈夫な外唇で構成されています。椎間板をまんじゅうに例えると、髄核は中に入っているあんこ、繊維輪はまんじゅうの皮のようなものです。

髄核は子供ではゼリー状ですが、年齢とともに瑞々(みずみず)しさがなくなっていきます。この椎間板に強い圧力が加わったり、繊維輪の弾力性が低下すると、亀裂が生じ、椎間板内の内容物(髄核)が押し出され、突出します。これを椎間板ヘルニアと呼びます。 高齢者の場合では髄核だけでなく、加齢により老化した繊維輪は一緒に飛び出すこともあります。

また、腰椎椎間板ヘルニアは比較的頻度の多い病気ですが、どのような人がこの病気になりやすいのか、詳細は十分に明らかになっていません。人口の約1%が罹患し、手術患者は人口10万人あたり、年間46.3人という報告があります。男女差に関してもこれを明らかにする大規模な研究はありませんが、男女比は約2~3:1という報告もあります。発症しやすい年齢は20~40歳代ですが、20代以下の若年者にも発症する病気です。

腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類

ひとことでヘルニアといっても、いくつかのタイプに分けられます。またタイプや発症部位により出てくる症状や予後、治療法も変わってきます。

髄核膨隆(protruded):繊維輪の断裂がない
髄核突出(prolapsed):繊維輪の部分断裂
髄核脱出(extrusion):繊維輪の完全断裂
髄核分離(sequestration):ヘルニアが硬膜外腔に遊離移動している

大きく分けてこの4つに分類されます。
髄核脱出タイプはさらに、後縦靭帯を突破していないタイプと、後縦靭帯を突破しているタイプに分類されることがあります。

髄核脱出タイプと髄核分離タイプは髄核膨隆タイプや髄核突出タイプと比較して自然退縮(縮小する・または髄核が通常の容積に戻ること)が起こりやすく、髄核分離は髄核脱出より、完全消失しやすいとされています。つまり、髄核が繊維輪から突破している方が激しく症状は出やすいですが、完治しやすいのです。

なぜ激しく椎間板が潰れた方が治りがよいのでしょうか?

髄核膨隆や髄核突出タイプと髄核脱出や髄核分離タイプの違いは髄核が繊維輪を突き破って、飛び出しているかいないかです。髄核が飛び出してしまった方が神経に大きく刺激を加え、激しい症状が出やすいですが、一方で白血球の一種であるマクロファージやリンパ球が脱出した髄核を分解、吸収してくれるため、治りが良いとされています。

腰椎椎間板ヘルニアの主な症状

冒頭でも少し紹介しましたが、発症部位やタイプなどにより、腰椎椎間板ヘルニアで現れる症状は様々です。

◎腰痛
不良姿勢や、過度に力学的なストレスが椎間板にかかることにより、傷ついた繊維輪が神経に触れ、激しい痛みが生じます。

◎下肢痛
太ももの裏からふくらはぎを経て、足の先まで放散するような痛みが出ます。運動や労働で悪化し、安静で軽快します。

◎神経麻痺
椎間板ヘルニアでは感覚を司る神経と運動を司る神経が共に圧迫されるので、皮膚感覚障害や運動障害が現れることがあります。症状が出現する部位や筋肉は椎体の何番目のヘルニアが出るかで異なります。もっとも好発するのは第4腰椎と第5腰椎の間(L4~L5)です。

◎膀胱直腸障害
大きなヘルニアが中心部の太い馬尾神経を圧迫し、第2、第3仙髄神経に障害をきたすことがあります。 これらの神経は陰部の感覚や肛門、膀胱を収縮される筋肉を支配しているため、障害されることにより、尿が出にくい、残尿感がある、逆に頻尿になった、頻繁に尿失禁する、便が出にくい、肛門に力が入らない、便が無意識に漏れるなどの「膀胱直腸障害」を引き起こすことがあります。

好発部位と特徴

L1/L2の腰椎椎間板ヘルニア
腰の上あたりに痛みが出ることが多い部位です。

L2/L3の腰椎椎間板ヘルニア
足の付け根(鼠径部:そけいぶ)に痛みが出たり、だるさが出たりします。

L3/L4腰椎椎間板ヘルニア
太ももの前の部分が痛んだり、だるさ、しびれなどが出てきます。

L4/L5の腰椎椎間板ヘルニア
おしりから太ももの横、膝の下、外側のすねに痛みが出やすいです。腰痛、ヘルニアの原因の中で圧倒的に多いのがこの部分を原因としたものです。骨は下にあればあるほど体重により負荷が大きくなります。さらに、腰を曲げ伸ばしする際に動かす部位であるため、より大きな圧力がかかり、ヘルニアが起こりやすくなります。

L5/S1の腰椎椎間板ヘルニア
おしりの真ん中、太ももの裏、ふくらはぎ、かかとから足の裏、足の小指がしびれたり痛みが出たりします。アキレス腱反射が弱くなり、つまづきやすくなります。

ヘルニアの診断

一般的な整形外科ではレントゲンを撮ることが多いですが、レントゲンではヘルニアの診断はできません。ヘルニアを疑われる場合はMRIで確定診断を行います。椎間板の変性度やヘルニアの脱出形態を確認します。

ヘルニアの際に用いられる整形外科的テスト

◎SLR(下肢伸展挙上)テスト
膝を伸ばした状態で、上に持ち上げた時、太ももの後ろからふくらはぎやすねの外側に沿って痛くなるかどうかを調べるテストです。

陽性の場合、お尻から足先にかけて、坐骨神経領域(L4、L5、S1)にしびれや痛みが生じます。 持ち上げた角度が70°以下しか上がらない場合も陽性で、坐骨神経領域に問題があると考えられますが、しびれがない場合は陰性です。

◎FNS(大腿神経伸長)テスト
このテストでは大腿神経といわれる、鼠径部から太もも前、さらには足先にかけて走る神経を伸長させるテストです。うつ伏せで寝た状態から、片方の膝を90°に曲げ、他動で(誰かに)太ももを持ち上げてもらいます。大腿神経(L2、L3、L4の神経根)に障害があると、神経に沿った大腿前面に痛みやしびれがし生じます。このテストもしびれが出ない場合は陰性です。

腰椎椎間板ヘルニアの治療方針

腰椎椎間板ヘルニアの基本的な治療方針は保存療法(安静)と対処療法(鎮痛)が基本になります。

椎間板ヘルニアの痛みの原因は、変形した椎間板や脱出した髄核が神経に当たり、神経に炎症が起こること。神経の炎症を抑えて痛みを軽減させる方法として抗炎症薬やステロイドの内服や注射といった方法があります。また、リハビリや内服薬、ブロック注射などで痛みや痺れを軽減させることもあります。対処療法と保存療法を行ううちに、ヘルニアのタイプによっては、髄核が退縮していくかもしれません。

それでも痛みや痺れが軽減せず、日常生活に大きく影響してしまう場合や膀胱直腸障害が激しく出る場合、運動麻痺が出てしまった場合には外科的手術で飛び出した髄核を摘出することになります。

スリーウエルネスでできること

腰椎椎間板ヘルニアでは、「手術適応でない」と判断された場合は腰痛と上手く付き合っていくことも必要になってきます。日常生活動作では、荷物を運ぶ際は腰を落とし、しっかりしゃがんだ状態から持ち上げるなど、気を付けられることは行っていきましょう。また、筋力トレーニングやストレッチもおすすめです。

体幹のインナーマッスルを鍛えることで、腰が安定し腰への負担を軽減できるため、腰痛の改善も期待できます。また、ヘルニアになる方の中には、普段の姿勢が悪く、腰に負担がかかりやすい生活をしている方も多いです。ストレッチやストレッチポールを活用したエクササイズも腰への負担が少なく、姿勢改善が期待できます。

腰痛の痛みが強い場合トレーニングは禁物ですが、腰痛と上手く付き合っていくには、筋力や柔軟性も必要。スリーウエルネスでは、トレーナーが身体の様子を見ながら、マンツーマンでトレーニングを教えてくれるので無理なくトレーニングが行えます。また、ケアもその場で対応できるので、硬くなった筋肉を柔らかく、使いやすく、痛みを緩和した上でのトレーニングも行えます。

スリーウエルネスで一緒に痛みのない身体を目指しませんか?

スリーウエルネス理学療法士 原田

<参考文献>
日本脊髄外科学会:腰椎椎間板ヘルニア
腰痛対策-厚生労働省

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