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トレーニング&ケア

2022.10.26

理学療法士が解説!女性に多い尿漏れ「腹圧性尿失禁」の原因と予防

こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の末廣です。
10月に入り、急に寒くなってきました。最近はお買い物へ行くとハロウィン一色で、なんとなくワクワクしてきますね。

人に相談しにくいけど意外とお悩みの方は多いのが尿漏れ。尿漏れのことを医療用語では「尿失禁」と言い、『自分が排尿しようと思う場所以外で尿が出てしまうこと』という体の状態を指します。ひと言で尿失禁と言っても、原因は様々。原因が違えば対処法も変わってきます。

尿失禁にお困りの方は、まず泌尿器科を受診し、原因をはっきりさせて適切な治療やトレーニングを行うことが大切です。 今回のブログでは女性に多い尿失禁の予防・改善のためのセルフトレーニングについて詳しくお伝えします。

尿失禁の原因

日本泌尿器科学会によると40代以上の女性の4割以上が尿失禁を経験しているそうです。またそのタイミングも、産後に悩む方もいれば、年齢を重ねて症状が現れる方もいるなど人それぞれ。尿失禁は原因により4つのタイプに分類されます。ではその原因についてみていきましょう。

腹圧性尿失禁

重い荷物を持つ、くしゃみをするなど腹部に力が入った時に尿が漏れてしまうなど、腹圧が上がった瞬間に漏れてしまうのが腹圧性尿失禁。女性の尿失禁の中では最も多く、週に一回以上経験している方は500万人以上と言われています。 腹圧性尿失禁の原因は骨盤底筋の筋力低下や機能不全で緩んでしまうこと。加齢や妊娠・出産を機に症状が現れる方が多いとされています。

切迫性(せっぱくせい)尿失禁

別名『ドアノブ失禁』とも言い、急にトイレに行きたいと思ったら我慢できず漏れてしまう状態をいいます。外出中や移動中などに不意に失禁してしまうため、高齢者の外出や活動を妨げる原因にもなります。 排尿は本来、脳からの指令でコントロールされていますが、その指令がうまくいかなくなり、勝手に膀胱が収縮してしまい、切迫した尿意を急に感じ、尿失禁を起こしてしまいます。指令が上手くいかなくなる原因も、脳血管障害のようにはっきりしている場合もあれば、明らかではない時もあります。男性では前立腺肥大、女性では膀胱瘤や骨盤臓器脱などの持病を持っていると切迫性尿失禁になりやすいと言われています。

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

自分で尿を出したいのに出せない、でも少しずつ漏れてしまうような失禁です。前立腺肥大など尿が出にくくなる障害がもともとある方に多いのがこの「溢流性尿失禁」です。

機能性尿失禁

泌尿器にかかわる体の部位ではなく、例えば認知症で排尿する場所が分からない、尿意を伝えられない、歩行スピードが遅くトイレまで間に合わないといったタイプがこの「機能性尿失禁」です。

尿漏れの予防、改善の方法は?

尿漏れの原因やその程度によって、トレーニングで改善が見込めるもの、生活習慣の改善や適切なダイエット、行動療法や内服、手術が必要な場合までさまざまです。

妊娠や出産、閉経など女性のライフイベントや急激な体重増加などで引き起こされる「腹圧性尿失禁」の原因は骨盤底筋群が弱化。腹圧性尿失禁の初期や一部の切迫性尿失禁は骨盤底筋群トレーニングでの改善も可能といわれています。

骨盤底筋群とは?

前回のブログで骨盤底筋群のはたらきや役割をお話しました。簡単に復習すると、骨盤底筋は腸骨・坐骨・恥骨からなる骨盤の一番底の部分にある筋肉の集合体で、随意筋(自分の意志でコントロールできる筋肉)と不随意筋(自分の意志でコントロールできない)の両方で構成されています。

主に、骨盤内にある臓器(子宮、膀胱、直腸など)をハンモックのように支え、正しい位置に保つ、体幹部のインナーマッスルと共同して腹圧を保つ、排尿や排便のコントロールをするという3つのはたらきがあります。

この3つのはたらきのうち、排尿のコントロール機能が上手くはたらかず、尿道をうまく閉じられなくなることが腹圧性尿失禁の原因です。

腹圧性尿失禁にお勧めの運動

腹式呼吸

腹式呼吸は骨盤手筋群のトレーニングを行う時の基本的な呼吸法になります。骨盤底筋群は腹式呼吸の際、横隔膜と連動し、息を吐くときに頭側へ、吸うときにお尻側へと動きます。頭側へ上がっているとき(息を吐いているとき)に、骨盤底筋群は収縮しやすい状態になります。運動を行う際には、息を吸うときはリラックスし、息を吐くときに力を入れるように意識すると筋肉に力が入りやすく、また力が入ったかどうかも分かりやすくなりますよ。

ゲーゲル体操

前回ブログでは、仰向けでのゲーゲル体操を紹介しました。姿勢は違いますが、意識するポイントは同様です。

  • 息をゆっくり吐きながら骨盤底筋を引き締めます。
  • 力を入れるポイントは、ただギュッと腹圧をかけて引き締めるのではなく、『排尿を我慢する』ように、おへその方へ骨盤底筋を引き上げるようなイメージで行うと効果的です。
  • 3秒維持して、力を抜くを10回繰り返しましょう。一日に3~5セット行うと効果的です。

慣れてきたら、力を入れる時間を5秒~10秒と長くするのもよいでしょう。椅子に座って行ったり、足を肩幅くらいに開き立って行うと骨盤底筋に重力がかかるため、より負荷が強くなりますよ。力が入っているか分かりにくい方は、まずは仰向けから始めましょう。

バードドッグ

  • 四つ這いで腰を反らせない姿勢をとります。
  • 片手を前方へ伸ばし、反対側の足を持ち上げます。不安定な姿勢になりますが、体幹が安定させるよう意識することで、トレーニングになります。この時も腰がそらないように注意します。
  • 同時に骨盤底筋を引き上げるよう収縮させます。
  • 3秒維持して手足をいれかえてみてください。慣れてきたら、徐々に上げる時間を長くしていきましょう。左右3回ずつ行いましょう。

手足を同時に上げることで体がグラグラと不安定になってしまう場合は、手だけ・足だけというように体幹の安定する状態で同様に行ってみてください。

内転筋トレーニング(ボール挟み)

次に紹介する運動は、股関節内転筋群のトレーニングです。股関節内転筋群は内ももにある筋肉。骨盤内では骨盤底筋群と近い位置にあり、骨盤を安定させる働きがあります。骨盤底筋と連動して動くため、内転筋群を鍛えることで骨盤底筋群がはたらきやすくなります。

  • 浅く腰掛け、足は軽く開きます。足の間にボールを挟みます。
  • ゆっくり息をはきながら、ボールをつぶすようにお尻に力を入れます。
  • ボールをつぶした状態で5秒キープ、10回行う。

内転筋トレーニング(ボールスクワット)

もし物足りなければ、下肢の筋力強化になるこちらもおすすめです。

  • 腰幅で立ち、膝にボールを軽く挟む。腕は肩の高さで前へ伸ばしキープ。
  • 膝が90度になるまでゆっくりしゃがむ。膝がつま先より前へ出ないように注意。また、ボールを強く挟みすぎて膝が内に入らないようにする。
  • しゃがんだ姿勢で3秒キープ。10回行う。

今回紹介した全ての運動に共通していますが、骨盤底筋群に力を入れるのは『いきむ』ようにお腹に力を入れ腹圧を上げるのではなく、『骨盤底筋群をおへその方へ引き上げる』『尿やおならを止めるような』力の入れ方をすることが大切です。慣れるまでは難しいですが、力を入れればよい(腹圧を上げればよい)と思って、お腹に力を入れていきむような力の入れ方をすると、逆に骨盤底筋群に負担をかける可能性があり逆効果なので注意が必要です。

まとめ

骨盤底筋群のトレーニングによる機能改善は、「今日やったから明日には治る」というような即効性はありません。また、普通の筋トレと違い、目に見えて何かが変わるわけでないため、継続するモチベーションを保つのも大変かもしれません。3か月~半年ほど継続することで初めて結果が見えてくるものです。生活習慣の一部として、朝起きて布団の上で行う、お風呂上りに行うなど、毎日決められた時間に習慣化するのが良いかもしれませんね。

トレーニングを継続しても満足した生活を送れない場合には、原因に合わせて内服治療や手術の適応も考えられますので専門的な機関への受診を検討してみてください。

スリーウエルネスには看護師、理学療法士など国家資格保有者が在籍しています。お悩み事があれば、お気軽にご相談ください!

スリーウエルネス理学療法士 末廣

<参考文献>
日本泌尿器科学会HP
尿漏れ予防 | 健康長寿ネット
ウイメンズヘルス理学療法研修会編集,ウイメンズヘルスリハビリテーション,メディカルビュー社,2014
Kari BO,Bary Berghmans他原著,エビデンスに基づく骨盤底の理学療法,医歯薬出版株式会社,2017

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