理学療法士が解説するラジオ体操 ~呼吸機能の向上編~
目次
こんにちは、スリーウエルネスの末廣です。
外出自粛が続き運動不足になっていませんか?今回はそんな方に身近な運動としてラジオ体操第1をご紹介します。
ラジオ体操の歴史
誰もが一度は経験するラジオ体操ですが、なんと93年の歴史があります。当時、日本では平均寿命が40歳台と短く、いろいろな感染症が頻繁に流行していました。それを危惧した簡易保険局、日本放送協会(NHK)、生命保険会社協会の三者が国民の健康維持、増進のため当時の文部省に体操の考案を依頼しラジオ体操ができました。
国民が健康向上し寿命が延び幸せな生活を送れるように、という願いがラジオ体操には込められているんですね。
実はすごい!ラジオ体操の運動効果
そんな長い歴史を持つラジオ体操ですが、しっかり行うと、実は卓球やパワーヨガと同じくらいの運動負荷になります。更にラジオ体操を継続することで以下の効果が期待できます。
【身体機能面での効果】
- 全身運動による基礎代謝up、血管年齢の若返り(動脈硬化の進行予防)
⇒脳卒中や心臓病のリスクが低くなる - 新陳代謝の向上による脂肪燃焼効果、体力年齢の若返り(歩行能力、柔軟性、筋力の向上)
⇒筋力低下予防、柔軟性の向上、姿勢の改善、転倒予防、膝痛の改善 - 呼吸機能が向上
⇒運動などしても息切れを起こしにくい - 血行促進による首・肩のこり、腰痛予防や改善、冷え症、むくみの予防・改善
- 消化器の働きを改善し便秘予防
- 屈伸運動や跳躍運動による骨粗鬆症の予防
【メンタル面での効果】
- ストレス解消
- 活力が湧く
- 精神的なゆとりが出てくる
ラジオ体操は伸びの運動から始まり、中間で負荷が最も強くなり、終わりに近づくにつれ緩やかな運動になります。これは体に負担が残りにくい構成になっているためです。体操の順序にも意味があるんですね!
有酸素運動の側面から考えると呼吸を止めずに行うことも大切。このことにより各筋肉はよく伸び、運動効果を高めることができます。
今日はそんなラジオ体操第1の中から呼吸機能の向上に効果が期待できる運動を2つ紹介します。
4番目:「胸を反らす運動」
狙い 胸を開いて呼吸機能を促進
運動のポイント
胸を開きながら大きく息を吸います。動きは止めません。
腕を開くとき手のひらを上向きに首は斜め上を向き、胸を反らします。腰は反らしません。4回繰り返します。
注意点
不安定な場合は、座って行ってください。
理学療法士目線で考えられる効果
- 胸を反らしながら腕を斜めに上げることで胸が開き、空気を深く吸いやすくなります。
- 胸や肩・首周囲の筋肉がストレッチされます。肩周囲の柔軟性が向上し、首や肩周囲のリラクゼーション効果や血行が促進されるので、ストレートネックの改善、肩関節の可動域の改善、肩こりの改善などの効果も期待されます。
9番目:「体を斜め下に曲げ、胸を反らす運動」
狙い 背中から太ももの後ろにあたる体の背面の筋肉を伸ばす。
胸を開いて呼吸機能を促進。
運動のポイント
上体の力を抜いて弾みをつけながら斜め下のほうに前屈します。
起き上がるときは手のひらを返しながら腕を後ろに引いて胸を反らします。
反対側も同様に行い、2回繰り返します。
注意点
不安定な場合は、座って行ってください。その際は、斜め前への前屈はゆっくりと行ってください。
理学療法士目線で考えられる効果
- 前屈する際は息を吐きながら行うと、その後の胸を開いた動作時によりしっかりと息を吸うことができます。
- 胸が広がって、呼吸機能が改善すること以外にも弾みをつけながら前屈を行うことで太ももの後ろの筋肉のストレッチ効果が得られます。
- 背中にある筋肉のストレッチになるので、柔軟性の向上や猫背の改善、骨盤の位置の修正など正しい姿勢づくりに役立ちます。また、腰痛予防に効果があると言えます。
今回はラジオ体操第1の中から呼吸機能の向上に効果のある運動を2つご紹介しました。ラジオ体操は一連の流れで行うのもいいですし、ご自身の体力に合わせていくつか運動を取り出して行うのも効果的があります。
コロナ禍のため外出制限が続いておりますが、自宅で気軽にできる運動のひとつとしてラジオ体操をぜひ試してみてください。
[参考資料]
- NPO法人全国ラジオ体操連盟『ラジオ体操みんなの体操テキストブック』NHKサービスセンター2018
- 一般財団法人簡易保険加入者協会発行『ラジオ体操DE健康タウン』https://www.fpp.or.jp/radio_taiso/pdf/radio_jirei.pdf