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トレーニング&ケア

2024.08.12

人生100年時代!知っておきたい腸内環境の整え方

こんにちは、スリーウエルネストレーナー:健康運動指導士の尾嶋です。近年、腸内細菌に関する研究が進められ、テレビや新聞、インターネットなどさまざまな方面で「腸内細菌」「腸内フローラ(腸内細菌叢)」「腸活」などの言葉が取り上げられることが増えてきました。今回のブログでは、「腸内細菌」の最近の知見と生活習慣との関連について紹介しますので、健康維持増進のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

人と共生する腸内細菌

私たちが生きてうえで必要な栄養素やエネルギーは、食べ物を消化・吸収し、代謝することで得ています。

口から入った食べ物は、食道を通って胃に流れ、胃酸で溶かされ吸収しやすい状態に消化されます。その後、小腸を巡りながら徐々に分解が進み、栄養素として吸収され、細胞内で水と二酸化炭素になるまで分解されながらエネルギーがつくられます。

さらに、小腸で吸収しきれなかった残りかすは大腸で水分等を吸収し、分解しきれなかったものなどが最後に便となって体外に出されます。

そうした口腔から肛門までの消化・吸収に関する一連の管は消化管と呼ばれ、皮膚などの体表と同じく外界と接するため、常態的に細菌と関わりをもつ器官でもあります。そのため、特に小腸と大腸に代表される腸管には、およそ1000種類、100兆個以上もの細菌が生息していると言われており、腸内に生息する細菌はそれぞれグループを構成し、密集してひしめき合っていて、腸内の細菌たちは「腸内フローラ(腸内細菌叢:叢はくさむらの意味)」と呼ばれています。また、それぞれの腸内細菌は人と同じように代謝構造を持っており、人が分解しきれなかった残りカスをエサにエネルギーなどをつくり出し、代謝産物を排出しています。

このように、腸内細菌は人の食べた物などをエサにして生きており、菌の代謝産物は宿主である人の生体機能に影響するため、人と腸内細菌の間には共生関係が成り立っています。その一方で、菌によっては腐敗産物や有害な物質を排出することもあり、生体機能だけでなく、肥満やメタボリックシンドローム、がんやそのほかの疾患に関わっていることが示唆されています。

日々変化する腸内細菌のバランス

 一般的に、その菌の働きや代謝産物が、人体にとって有益とされるものは「善玉菌」、増殖すると害を及ぼすとされるものは「悪玉菌」、そのどちらでもないものは「日和見菌」として3つのグループに分けられ、互いに関連しながらバランスをとっています。

~菌の種類~

【善玉菌】

代表的な菌

代表的な菌:ビフィズス菌、乳酸菌

作用:ビタミンの合成、消化吸収の補助、感染防御、免疫刺激

身体への影響:健康維持

【悪玉菌】

代表的な菌:ブドウ球菌、ウェルシュ菌、大腸菌(有毒株)

作用:腸内腐敗、細菌毒素の産生、発がん物質の産生

身体への影響:病気の引き金

【日和見菌】

代表的な菌:大腸菌(無毒株)、連鎖球菌

身体への影響:健康な時は問題ないが、身体が弱っている時などに、腸内で悪い働きをする

腸内細菌は、出生直後の胎児の胎便ではほぼ確認できないものの、生まれるときに通る産道や母乳を介して親から受け継いだり、外界と接触することで体内に菌が侵入していき、3~5歳くらいまでに個人の腸内細菌叢の組成が決まってくると言われています。

基本的に、決まった組成はその後年齢を重ねてもほぼ変わらないとされていますが、その割合やバランスは日々の生活習慣や疾患などの影響により、日々変化しています。

では、善玉菌を優勢にするにはどうしたらいいでしょうか?

善玉菌を優勢にするにはどうすれば?

 腸内細菌のバランスが日々変化する因子は食事によるものが大きいとされています。

そこで、善玉菌を優勢にするためのアプローチの一つとして「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」の摂取が勧められています。

プロバイオティクス

「プロバイオシス(共生)」を語源とし、「適正量を摂取することにより宿主の健康に有益な作用をもたらす微生物」と定義しています。具体的には、乳酸菌やビフィズス菌などの生きた善玉菌を直接摂取して取り込むことを指しますが、これらの菌は組成が決まったあとに外から取り入れても、一定の期間は存在するものの、そのまま住み着くことはないとされているため、毎日続けて摂取し、腸に補充することが求められます。

〔摂取できる食品〕:ヨーグルト、チーズ、キムチ、ぬか漬け、味噌など

プレバイオティクス

「大腸内の有用菌を選択的に増殖あるいは有害菌を抑制し、宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分」と定義されています。具体的には、食物繊維や難消化性オリゴ糖などの摂取で、これらは消化・吸収されず大腸まで達し、腸内にもともと存在する善玉菌のエサとなるため、このエサを多く与えることで数を増やそうという考え方です。なお、食物繊維は、1日当たりの目標量(生活習慣病の発症予防を目的に、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性は21g以上、女性は18g以上とされています。

摂取できる食品:豆類、きのこ類、玄米、全粒粉パンなど

参照元:厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 その他、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものは「シンバイオティクス」と呼ばれ、医療や食品への展開が図られています。また、腸内細菌を介することなく、体に働きかける作用があるとされる乳酸菌生産物質等を摂取する「バイオジェニックス」と呼ばれるものもあります。

食事だけじゃない!?腸内環境に影響する原因とは?

 食事以外にも腸内環境に影響する原因は様々あります。

原因の一つが脳との関係性です。脳と腸は一見関係がないように思われますが、ストレスを感じた時、極度に緊張をした時など、お腹が痛くなったり、便が緩くなったりなどの経験のある方もいるのではないでしょうか。

実は、腸と脳は相互に影響しあっていることは、昨今の研究などでわかってきています。脳からの信号によって腸が影響を受けるだけではなく、腸の状態が脳の状態や活動にも影響を与えると考えれれています。

また、ストレスによって腸の免疫機能が低下して、腸内細菌叢のバランスが乱れることもわかっています。

気持ちの落ち込みや不安などの精神的な状態の変化が腸内細菌叢の変化を引き起こし、腸内環境の変化がストレスや不安を増すといった相互が関連していると言われています。なるべく、ストレス抱えないことも、腸内環境を整える方法の一つかもしれません。

おわりに

腸内細菌の研究はさらに進み、大腸の病気から全身の疾患、脳の機能さえも影響を及ぼしていることが明らかになってきています。

また、最近の研究では、自閉症から始まって認知症に関わるアルツハイマー病やパーキンソン病と腸内細菌の関係までもが解明されつつあり、今後は腸内細菌をもとに、病気を診断する方法から健康を維持増進するための方法へと発展を遂げていくことと思われます。

人生100年時代と言われる現在において、健康の維持増進のためにも、自分自身の腸に関心を持ち、食事や運動・休養などを工夫して、ビフィズス菌や酪酸生産菌などの力を借りながら健康寿命を延ばして行きましょう。

■引用資料

発行/公益財団法人 健康体力づくり事業財団 2021年11月号 健康づくり№523

特集記事「健康をささえる腸内細菌」

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