もしも脳卒中になってしまったら・・・リハビリの流れと内容を理学療法士が解説!
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こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の原田です。
以前のブログで、「脳卒中とは?」、「症状や予防法」などを紹介しました。もちろん脳卒中に関わらず、重大な病気に罹らず平穏な老後を過ごせるのが理想ですが、今回のブログではもし脳卒中に自分や家族がなってしまった時、どのタイミングでどんなリハビリを行うのか、またスリーウエルネスではどんなトレーニングを行っているのかを紹介します。
なぜ早期にリハビリ開始するべきなの?
昨今、脳卒中に関わらず、リハビリの現場では「早期リハビリ」や「早期離床」という言葉を耳にします。文字通りなるべく早ベッドから離れリハビリを始めましょうという意味ですが、そもそも脳卒中になるとなぜ早期にリハビリを開始するのが良いとされるのでしょうか?
後遺障害(麻痺や言語障害)からの回復を早める
脳卒中発症直後は脳全体が腫れ、脳の血流が悪くなります。しかし、時間と共に血流が改善し脳の腫れが治まると、ある程度麻痺は回復します。この時期に適切なリハビリを行うことで、脳は新たな学習を始めます。例えば、左脳が障害されて右半身の麻痺が起きた場合、早期に右手を動かす訓練を続けることで、脳の別の領域の神経細胞が機能するようになり、麻痺の程度が軽くなることもあります。
寝たきり予防
人間は筋肉の伸び縮みが行われないと、1週間で10~15%の筋力低下が起こり、高齢者では2週間のベッド上安静で下半身の筋肉が2割も萎縮すると言われています。病気になったから、辛そうだからと動かさないでいると、結果的にもっと動けなくなり、寝たきりへという負の連鎖が起きるんですね。
廃用症候群予防
リハビリの開始が遅くなり、動かない期間が長くなると、廃用症候群を起こす可能性が高まります。廃用症候群とは、筋肉や骨の萎縮、関節拘縮(かんせつこうしゅく:関節が固まる)、褥瘡(じょくそう:床ずれ)、誤嚥性肺炎、精神的合併症(うつやせん妄)などの寝たきりによって引き起こされる合併症の総称で、高齢者が一度廃用症候群になると、元の状態まで改善させることは非常に難しくなります。
入院期間の短縮
早期のリハビリ開始には運動麻痺などの後遺障害から回復を早めたり、廃用症候群を防ぐだけでなく、「入院期間の短縮に繋がる」=「社会復帰を早める」というメリットもあります。だからこそ脳卒中に限らず発症・受傷後なるべく早い段階でリハビリを開始することは大切なんですね。
脳卒中のリハビリをサポートする専門家
病院では医師・看護師・介護士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・ソーシャルワーカーなどの他職種が一つのチームになって患者さんをサポートしています。その中で主にリハビリを担うのが、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。一度は耳にしたことがある職業かもしれませんが、それぞれ具体的にどのようなことに特化した専門家かご存知ですか?
理学療法士
「座る・立つ・歩く」など生活の基本的な動作の練習を専門としており、そのために必要な関節や筋肉の動きを獲得するためのリハビリを行います。
作業療法士
「食事・更衣・家事や趣味活動」など日常のあらゆる活動を通じて身体の回復や精神状態の改善を図り、自立した生活を送るためのリハビリを行います。
言語聴覚士
「脳卒中後の言語障害(失語症、構音障害)や聴覚障害・ことばの発達の遅れ・声や発音の障害」などに対して、リハビリを行います。また、医師や歯科医師の指示のもと、嚥下訓練や人工内耳の調整も行います。
脳卒中発症後からのリハビリの流れとは?
前回ブログでも説明しましたが、脳卒中の発症後の症状や後遺症は人それぞれ。だからこそ、リハビリもひとり一人、発症からの期間や症状に合わせた様々なアプローチを行います。しかし、主には以下のような流れでリハビリが進んでいくことが多いです。
<急性期>発症直後~約2週間程度
発症から2週間ほどの症状が安定するまでの時期を急性期と言います。廃用症候群予防のために発症直後や翌日からリハビリを開始します。この時期は自分で身体を動かせる方が少ないため、医師の指示のもと、血圧の変動などの全身状態に注意しながら、理学療法士が患者の手足を動かして関節可動域訓練を行ったり、早期離床に向けてベッドのギャッジアップなど座るための練習を行います。
<回復期>発症後1か月~6か月
急性期を過ぎ、その後1~2か月間は症状が回復しやすい時期に入ります。この時期のことを「回復期」と呼びます。回復期のリハビリは「回復期リハビリテーション」といい、専門の病院や施設でしか受けることができません。この期間に麻痺や失語などの後遺症の改善に加え、ベッドから一人で車いすに乗り移る、自宅での生活や復職の訓練を行うなど、さらに生活機能を高めるための訓練が行われます。
例えば「歩いて家に帰る」という目標があるとすれば、「歩く」ための筋力やバランストレーニング、歩行練習はもちろん、家に帰ってからの生活環境や生活習慣を想定し、回復期の期間中に環境の設定も行います。環境の設定は実際に患者さんの自宅に行き、生活動線を確認しながら、寝室の位置やベッドの配置の選定、必要であれば家屋改修もアドバイスを行い、退院までにスロープなどの改修をすることもあります。このように、回復期には退院後の生活を見据えたリハビリを行なわれます。
<生活期>発症後6カ月~
発症後6か月以降を「生活期」と呼びます。回復期リハビリテーション病棟は150日間と入院期間が決まっています。そのため、期限を過ぎると自宅へ戻る、または自宅での生活が難しい方は療養病院などに転院するなど、これまで過ごしてきた地域や新しい環境での生活が始まります。生活期のリハビリは主に介護保険を使用し、訪問リハビリやデイケア(通所リハビリ施設)などに通い受けることになります。
生活期のリハビリの主な目的は、筋力や能力の維持・向上、生活する上での困りごとを解決していくこと。例えば、家に帰ってきたのは良いが、実際に生活してみると家の周りは坂道ばかりで歩きにくかった、家に帰って最初はできていたことが徐々に運動の機会が減り、動作がしにくくなったなど、実際の生活面での困りごとが出てきます。これらの困りごとを減らし、残された身体機能でできることを増やしていくことが生活期のリハビリです。
スリーウエルネスでできるリハビリって何?
スリーウエルネスには理学療法士が在籍しており、病院や施設勤務の経験を生かしてお客様のトレーニングをサポートしています。
生活期に該当し、病院を退院してから間もない方、ある程度の年数が経った方など、利用者には様々な方がいらっしゃいます。今回はお客様のトレーニングの様子の一例をご紹介しますね。
スリーウエルネス脳卒中後遺症トレーニング例(Aさんの場合)
(目標)
Aさんは退院後、社会復帰したものの、仕事や生活の中で屋外での歩行機会が増え、足場の悪い屋外や長時間の歩行に不安定さを感じ、スリーウエルネスでトレーニングを始めました。「もう少し安定して長く歩きたい」という目標をもってトレーニングを頑張っています。
(理学療法士による評価)
個々の利用者様のトレーニングプログラムを作る前に、まず理学療法士は何が要因で問題が起きているかを評価します。問題が筋力の弱さにあるのか、柔軟性にあるのか、感覚やバランスなのかなど洗い出しを行い、その評価を踏まえた上でその方に合った方法・負荷量・回数を設定し、マンツーマンでトレーニングを行います。
(Aさんの問題点・課題)
Aさんの問題点としては、感覚とバランス。上手くバランスが取れないために長時間の歩行や不安定な足場の地面での歩行が難しくなっていました。
(Aさんのトレーニングプログラム)
トレーニング開始前には毎回、血圧測定後、問診や身体を触診しながら関節や筋肉の柔軟性などの状態を確認します。また、ストレッチポールに乗って全身の筋肉を緩め、その後トレーニング行います。
Aさんはバランス能力を改善させるためのトレーニングを重点的に行っています。床上動作もよく行います。特に膝立ちの姿勢は意外と腹筋力やバランス能力が必要になるので良いトレーニングになるんですよ。
そのほか目標である安定した歩行のために、不安定な足場でのスクワット動作や不整地歩行、階段昇降など、日常生活に必要な動作なども一緒に練習していきます。
時には、トレーニングマシンを使用して、筋力トレーニングを行ったり、有酸素運動を行ったりもします。トレッドミル(ランニングマシン)やバイク型の有酸素マシンでは、麻痺があると使用しづらいため、スリーウエルネスでは腕の動きと足の動きが連動するOGWellness製クロスステップWE‐100を使用し、お客様に安全にトレーニングを行っていただいています。
トレーニングだけじゃない!スリーウエルネスでできること
また、脳卒中後遺症の方は痙性(筋肉のこわばり)がある方が多くいらっしゃいます。そして、動かさない期間が長くなればなるほど、筋肉の緊張も強まり、関節の硬さへ繋がっていきます。こうしたことを防ぐために、トレーニングの中で、筋緊張を落とすことはもちろん、スリーウエルネスでは、ただトレーニングを行うだけではなく、ケアの時間も大切にしています。
スリーウエルネスには温熱機器「INDIBA®」や筋膜リリース施術「ファシアスリック・テクニック」の技術を持ったトレーナーが在籍しているので、身体に痛みが出た時や、痛みが出る前にケアを行うことで、お客様の慢性的な痛みを緩和や予防をしています。 生活の中で困りごとがある方、痛みに悩んでいる方、ぜひ一度スリーウエルネスに相談してみませんか?
スリーウエルネス理学療法士 原田
<参考サイト>
健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/index.html