マラソンレース中の適切な水分補給とは?よくある誤解3つを解消!
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こんにちは。スリーウエルネスの柔道整復師の大塚です。
今年は、パリオリンピックが開催されます。岡山県からも天満屋女子陸上競技部の前田穂南選手がオリンピック出場されますね。そんなトップランナー達が、レース中に給水所で水分補給をしているシーンは見たことがあると思います。各々に合ったスペシャルドリンクを飲んで、試合に臨まれています。ランナーにとって水分補給は必要不可欠で、熱中症や脱水症状の予防になります。しかしその一方、摂りすぎてしまうと体調を崩すことも。実際にボストンマラソンでは、レース中に水分を摂りすぎて亡くなった方がいるという報告もあります。
このように水分の過不足状況は、ランナーにとって様々な症状を発生させます。今回は、「適切な水分補給」について紹介していきたいと思います。
マラソンレース中の適切な水分補給について
成人の体は60~70%が水分で占めています。
マラソンレースでは大量の汗をかき、体から水分が失われます。熱中症や脱水などのリスクが高まるだけでなく、運動パフォーマンスが低下する可能性もあります。そのため適切に水分を補給することが必要になります。しかし、水分補給の方法は様々で誤解されていることも多く、迷うこともあると思います。では、適切な水分補給の仕方について説明していきます。
レース中に水分補給に関する誤解
NG①レース中に水を飲まない
今ではありえない話ですが「水を飲むと汗をかき疲労を早める」、「意欲が低下する」などの理由から、かつてはレース中の水分補給を制限する考え方が根強くありました。私も野球をやっていましたが、練習中に水を飲ませてもらえないことが多々ありました。
しかし、これらに科学的根拠はないと言われています。言わば根性論です。無理に喉の渇きを我慢して頑張っても、過度の脱水になりパフォーマンス低下に繋がります。また熱中症のリスクも高まり、命の危険にも繋がりかねません。
NG②レース中に出来るだけ多く水を飲む
現代は水を飲むことを積極的に勧める考え方に変わってきました。
レース中の喉の渇きは体液が不足してから遅れて感じるため、レース中は体液が不足しがちになります。そのため、レース前などから水分を少し多めに取っておくことなどが推奨されてきました。
しかし、かえって水分を摂りすぎてしまうと身体に悪影響を及ぼすこともります。実は水を飲みすぎてしまうと胃の調子が悪くなるだけでなく、低ナトリウム血症(水中毒)になり、重篤な場合は生命を脅かす事態になることもあります。
NG③マラソンで起きる疲労困憊アクシデントの原因ほとんどが「脱水」
マラソン中などに極度に疲労し足取りがおぼつかない状況になったり、体調不良を訴えたりすることがありますが、よく原因として考えられるのが「脱水」です。
しかし、外見上の症状が同じでも、低ナトリウム血症(水中毒)や低血糖など様々な症状が疑われます。特に低ナトリウム血症(水中毒)は脱水と違い、水を飲みすぎてしまうことが原因で起こってしまいます。
また、昨今は脱水よりも発症率が高いのではないかとも言われています。アクシデントの原因が脱水によるものという先入観で、対処しないように注意しましょう。他に疾患が隠れているかもしれません。
レース中の水分補給の適量とは
自分自身の適量の水分補給量はどのくらいだと思いますか?意外と知らない方も多いと思います。実は、自分に適した量を客観的に数値で見ることが出来ます。それでは見ていきましょう。
①発汗量
ご自身の発汗量を知っておきたいところです。水分補給量は発汗量が一つの目安にもなります。マラソンでの発汗量は下記の方法で簡単に予測できます。
マラソンのレースペースで1時間走を行い、前後の体重を測定します。
その体重差=体重減少量(1時間当たり)になります。
●発汗量=体重減少量
=走行前の体重-走行後の体重
途中で飲み物を補給した場合は、その量を加えます。
●発汗量=体重減少量+飲水量
走った時間が1時間でない場合は、1時間当たりの量に補正します。
●発汗量=(体重減少量+飲水量)÷走行時間(分)×60(分)
②水分補給量の目安
体重管理が苦手な場合は、水分補給量をおおよそに数値で把握しておきましょう。
水分補給量(1時間当たり):400~800ml
マラソンレース中の給水所で水分補給量
気温が高い日、身体の大きなランナー、エリートランナー(サブスリーなど)の場合
多めの量:給水所で100~150ml(目安)
気温が低い日、身体の小さなランナー、初心者ランナー(記録が遅い)の場合
少なめの量:給水所で50~100ml(目安)
ご自身のレベルや体調、レース環境などに応じて必要な水分を補給するようにしましょう。
③脱水率
レース中などの水分補給量は必ずしも発汗量相当である必要はなく、多少不足しても問題ありません。その不足分、すなわち脱水率が2%程度におさまっていれば、その時の水分補給量は適量と判断されます。脱水率が3%を超えるようであれば、水分補給量は不足していると言えます。逆に、走った後に体重が増加し、脱水率がマイナスの場合は、明らかに水を飲みすぎのため注意が必要です。
●脱水率(%)=体重減少量÷走行前の体重×100
例 体重60㎏ 男性 フルマラソン完走後、体重が58.8㎏に減少
1.2(体重減少量)÷60(走行前体重)×100=2
脱水率は2%なので、適量と判断できます。
参考:「マラソンレース中の適切な水分補給について」 ランニング学会
「喉の渇き」に応じた水分補給をしよう
マラソンレース中の水分補給量は、ランナーの発汗量に見合っている必要があります。
しかし発汗量は人によって様々です。走るスピード、体型、天候などでも大きく影響されるため、発汗量に見合った適量を数値で細かく表すことが難しいです。
では個人の水分補給量を知るには、どうしたらいいのでしょうか?
それは「喉の渇き」です。客観的数値も大切ですが、主観的な「喉の渇き」で判断することが推奨されています。これなら誰でも簡単に取り入れることができ、深刻な脱水症状、飲みすぎによる水中毒などの予防になります。
終わりに
これからの季節、レースはあまりありませんが練習でも注意が必要です。
最近は春でも真夏日のような日もあるため、水分補給はこまめにしましょう。
様々な数値を知っておくことも非常に重要ですが、数値で判断するよりも、そのときの「喉の渇き」や身体のコンディションを重視して、水分補給をするようにしましょう。
スリーウエルネス柔道整復師 大塚