健康寿命と平均寿命の関係は?~運動が健康寿命に与える影響について~
目次
こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の末廣です。
日本は世界有数の長寿国です。要因は様々考えられますが、国民皆に保険が行き届き、ほとんどの国民が諸外国と比較して安価で高度な医療サービスを受けられることも要因としては大きいのではないでしょうか。
長寿国と言われて久しいですが、近年では平均寿命とともに「健康寿命」という言葉も市民権を得られ始めています。平均寿命の向上は喜ばしいことですが、長期間の療養や入院で晩年を過ごすことを望む方はいないと思います。では健やかに老後を送るためには何を行えばよいのでしょうか?
今回のブログでは健康寿命と平均寿命の違いを詳しく説明し、運動が寿命と健康に与える影響について解説します!
平均寿命、健康寿命とは
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。
日本においては、厚生労働省が3年ごとに行っている「国民生活基礎調査」の回答をもとに健康寿命を算出しています。
健康寿命と平均寿命について、2019(令和元年)のデータを見てみましょう。
この年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳でした。これに対して健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっており、それぞれ約9年、約12年の差があります。
健康寿命と平均寿命の差はいわゆる「不健康な期間、介護が必要な期間」と考えることができます。
人生最期の約10年間の不健康な期間を短くするためには何をすれば良いのでしょうか。
健康寿命を延ばすには
健康寿命を延ばすことは、介護の必要なく自分の力で充実した生活を送ることができる期間を長くすると言い換えることができます。
厚生労働省によると、日常生活が制限され何らかの形で介護が必要になる大きな要因として、認知症・脳卒中・高齢による衰弱が挙げられています。
健康寿命を延ばすためには、「健康的な食事習慣」「適度な運動」「禁煙」「アルコールの適度な摂取」また「社会的なつながりの影響」などが重要と言われています。
個人の体質やライフスタイルは様々です。健康寿命を延ばすためにはこれらの要因をひとり一人の生活に合わせカスタマイズさせる必要があります。社会的資源の活用や、専門家にアドバイスを受けるのも有効です。
健康寿命を延ばすための食生活の例
1.バランスのとれた食事
五大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく摂取しましょう。
バランスのとれた食事は健康寿命延伸の基本です!
2.果物と野菜
カラフルで多様な果物と野菜を食べることは、抗酸化物質・ビタミン・ミネラルの摂取を増やし、慢性疾患のリスクを減らします。
特に葉物野菜やベリー類は美容にも健康にもおすすめ。
3.全粒穀物
白米や白パン(普通の食パンなど)の代わりに玄米や全粒小麦で作られたパンを摂取すると食物繊維が豊富にとれます。また、比較すると血糖値の上昇が緩やかと言われています。
4.脂質
オメガ-3 脂肪酸を含む魚(サケ・マグロ・サバなど)、植物性油(オリーブ油、亜麻仁油)、ナッツ、種子など良性の脂質を摂取しましょう。
5.タンパク質
魚、鶏肉、大豆製品、豆、ナッツ、種子など、タンパク質を多様に取り入れましょう。
6.間食
フルーツ、野菜、ヨーグルトを間食に選びましょう。加工食品やスナック菓子の摂取はほどほどに。
7.摂取カロリーに注意
過度なカロリー摂取を避け、食べすぎは肥満につながります。肥満だけでなく生活習慣病や慢性疾患のリスクを高めます。
8.水分
十分な水分を摂ることは健康寿命を延ばすために不可欠です。水分は体の代謝や健康に重要な役割を果たします。
健康状態・年齢・性別・嗜好に合わせて、食事プランを考えてみてはいかがでしょうか。糖尿病や高血圧など基礎疾患のある方は、医療系専門職の指導を受けることをお勧めします。
運動と健康寿命
運動することで、体の健康にはどのような影響があるのでしょうか。
1.循環器の健康
定期的な有酸素運動により、心臓病や高血圧のリスクが低下します。長期的な運動習慣により、動脈硬化を遅らせ、血管年齢を維持すると考えられます。
2.骨密度の向上
筋力トレーニングや重量を持つ運動、重力に抗う姿勢により、骨細胞の生成を促し、骨密度を増加させると考えられます。骨密度の増加により、骨折のリスクが低下し、健康寿命延伸には重要な要素となります。
3.体重管理
運動により肥満のリスクを軽減します。肥満は多くの健康問題のリスクファクターとなります。
4.認知機能への影響
運動により脳への血流量の増加、神経細胞が保護され神経伝達物質の増加が生じるとされています。また、運動の種類や頻度・負荷にもよりますが過剰なストレスホルモン(コルチゾールやアドレナリン)の分泌を適切に調節し、放出を軽減します。
これにより認知機能の改善に影響を与えます。適切な運動プログラムの設定が必要です。
5.ストレス軽減
前述したストレスホルモンの調節に加え、幸福ホルモン(エンドルフィン)が放出され、リラクゼーションが促進され、達成感や幸福感を高める効果も期待できます。
ランナーズハイを生じるホルモンしても知られています。
6.免疫システムの強化
炎症反応の制御、白血球や抗体の増加、循環の改善、ストレス軽減により、免疫機能を向上させます。
運動機能の向上以外にも、運動は様々な面で健康に関わっているんですね。
運動を日常生活に取り入れることは、健康な老後を迎えるためには必要不可欠。
一般的に、運動しないと40歳代から筋力低下が始まります。早期に運動習慣をつけることは長い老後にとって重要なステップとなりますよ。
運動の種類と頻度
筋力トレーニング
老後、健康で過ごすためには筋肉を衰えさせないことが大切。しっかりと鍛え、ストレッチし、自分の足で歩くことが健康寿命を延ばします!
ストレッチ
有酸素運動
有酸素運動の具体的な例はウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳やエアロビクスがあります。
例えばジョギングはウォーキングと比較するとカロリーを消費でき、持久力も向上しやすいです。一方で膝などの関節にかかる負荷も大きくなるといった側面があります。
水泳は、他の有酸素運動と比べて心肺機能の向上が図れますが、骨密度の向上という点では負荷が少なくなります。
エアロビクスやダンスは音楽に合わせて楽しく行え、ストレスの解消に役立ちます。
それぞれ特徴があるので、生活に取り入れやすく自分に合った運動を選びましょう。大切なのは継続できるかどうかです。
有酸素運動は週に150分以上(心拍数が上がる高強度の有酸素運動ならば75分以上)の運動が推奨されています。
週に2回の筋力トレーニングと組み合わせて筋肉量を増やすことで、基礎代謝も向上します。
身体の健康状態や目的によってどんな運動が適切かは様々です。わかりにくい場合は専門家からのアドバイスをうけるのもよい手段です。
おわりに~貢献寿命という考え方~
社会的つながりが健康寿命の延伸に影響を及ぼすと前述しました。それに関わる新しい考えが近年提唱されています。「貢献寿命」という考え方です。
何歳になっても可能な範囲で社会とつながることで、各人の強みを生かした活躍ができます。その結果として収入の有無にかかわらず些細なことでも、感謝される活動ができます。
このような活動を行える年齢を貢献寿命としています。
健康寿命の次の目標として、貢献寿命を意識することでメンタルへの良い影響に寄与するのではないかといわれています。社会とつながる、他者と関係を作るというのは精神的にも身体的にも健康に影響を与えます。
まずは第一歩にスリーウエルネスでトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。
スリーウエルネス理学療法士 末廣
【参考文献】
- Smith, J. (2022). “The Impact of Exercise on Cognitive Function: A Review.” Journal of Health and Wellness, 10(3), 45-58.
- 健康寿命を延伸する運動の効果:岡崎 和伸:日本生理人類学会誌 Vol.22,No.12017, 2 39 – 44
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」
- 健康長寿ネット:貢献寿命の延伸を:秋山 弘子著
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreisha-shuro-shakaisanka/kokenjumyo-enshin.html - World Health Organization (WHO) – “Physical Activity and Adults”
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/physical-activity - 厚生労働省2019年国民生活基礎調査概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/