走っていて膝や腰が痛みませんか?中高年ランナーのランニング障害 ~原因と予防~
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こんにちは。スリーウエルネス柔道整復師の大塚です。
先日、3年ぶりにおかやまマラソン2022が開催されました。3年ぶりのおかやまマラソン、気合を入れて走った方も多かったと思います。
スリーウエルネスにも大会前のコンディショニングを目的に来るランナーの方々が多くいました。 そんなランナーの皆さんのコンディショニングを行っていると、大会が迫るにつれ、走り込みなどの練習の際に、なんらかの痛みを抱えながらも続けているという方がほとんどでした。
日本臨床スポーツ医学会誌: Vol. 13「骨・関節のランニング障害に対しての提言」の中で中高年ランナーのランニング障害は腰痛と膝痛が多いという結果が報告されています。また「ランニング時の痛みの原因は走る距離にある」ことが多いとされています。そして、こうした体の痛みは、「月間で200km以上走っている人で現れる頻度が高かった」そうです。
身体の痛みは、アキレス腱炎や腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)といった、様々なランニング障害によって引き起こされます。では、なぜランニング障害は起きるのでしょうか。年齢?走り方?今回は、痛みの悩みが多い中高年ランナーにフォーカスして、何が原因なのかを紐解いていきましょう。
中高年のランニング障害に原因は〇〇だった
中高年ランナーの中には腰、ひざ、アキレス腱、足の裏など、様々な場所に痛みを抱えながら走っている方が多くいます。では、なぜ様々な場所が痛むのでしょうか?
原因①「加齢による筋肉量及び筋力低下」
一般的に、50代を過ぎると筋肉量が低下するスピードは早くなり、何もしなければ年間約0.5㎏筋肉量が低下するとも言われています。では筋肉量が低下すると、ランニング時、身体にどのような負担がかかるのでしょうか?
ランニングの際に膝関節にかかる負荷は体重の4倍~5倍と言われています。通常、ランニング時の地面からの衝撃は、脛骨粗面(けいこつそめん:膝蓋靭帯(しつがいじんたい)の脛骨付着部)から膝蓋靭帯(しつがいじんたい:膝と脛骨をつなぐ靭帯)、膝蓋骨(しつがいこつ:俗にいう膝のお皿)から大腿四頭筋(だいたいしとうきん:太もも前面の筋肉)の順に伝わり、最終的に筋肉によって吸収されます。
大腿四頭筋の筋力、筋肉量が低下すると、地面からの衝撃は、筋肉だけで吸収しきれず、その手前の膝関節や軟部組織(軟骨や靭帯、腱)に集中してしまい、関節や軟部組織に強い負荷がかかった結果、膝蓋腱炎(しつがいけんえん)などの炎症・痛みとなって現れます。走るだけでも大きな負荷を受ける関節・軟部組織に、筋肉量の低下が加わることで、より大きな負担をかけることになります。
ランニングフォームを改善すれば、多少負担が減らすこともできますが、ランニングフォームを変えるにも最低限の筋力が必要になってきます。
原因②「加齢による筋疲労の蓄積」
若いころは長距離を走った後、休めば回復し、数日もすれば疲労はなくなっていたと思います。年を重ねると、数日休んだ程度では疲労が抜けきれないと感じる方も多いのではないでしょうか?
しっかり回復しないまま再度走り始めると、疲労はどんどん蓄積し、最終的に悪影響を及ぼします。
例えば、前項で述べた筋肉量の低下に筋疲労の蓄積が重なると、足底筋群のアーチ(土踏まず)が沈下してしまい、足底(足の裏)だけでなく、股関節や腰に掛かる負担も増します。この状態で走り続けると足の裏や股関節や腰に痛みが出る可能性が高まります。
痛みを出さず走るには何をすればいい?
中高年ランナーが痛みを発する原因は、加齢に伴う筋肉量の低下、疲労の蓄積などがあるとわかりましたが、痛みなく、長くランニング・マラソンを続けるには、どうしたらいいのか見ていきましょう!
対策① 筋力トレーニング
タイムを縮めるため、痛みを出さないために姿勢良く走ろうと意識をしている方は多くいると思います。しかし、いくら良いランニングフォームを意識しようとしても、姿勢をコントロールする筋肉が弱れば、良いフォームの再現性は低くなってしまいます。また、スタート直後にはいいランニングフォームで走れていても、疲労が溜まった後半になると筋力不足からフォームが崩れるという方も多いと思います。
1つ例を挙げてみましょう。走る際に腰に痛みが出やすい方は、腰が引けた、骨盤後傾位(いわゆる猫背姿勢)になっている方が多いです。この姿勢で走ると、腰へ負担が大きくなり、痛みが出やすくなります。また、股関節の振り出しも窮屈なり、股関節へ負担も大きくなります。
では、どう対策すればいいのでしょうか。 ここで重要なのが、筋肉を「調整」して、骨盤を整えることです。「調整」とは、筋肉を鍛える部位、緩める部位を明確にし、骨盤をあるべき傾きに整えること。
骨盤後傾位になる原因は筋肉(腸腰筋(ちょうようきん)、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)、腹直筋(ふくちょくきん))の弱さや硬さです。これらの筋肉を鍛える(緩める)ことで、骨盤の傾きを調整することができますよ。
また、筋トレを行うと、筋力アップと同時に筋肉を動かす神経(運動神経)も鍛えられるため、ボディイメージ(正しいランニングフォームのイメージ)の再現性も高くなり、良いフォームの獲得につながりやすくなります。
対策② 定期的な体のメンテナンス
常にベストな状態でパフォーマンスを維持することは、トップランナーでも困難です。しかし、彼ら・彼女らは少しでも良い状態を保つため、入念なセルフケアや定期的に治療院へ通うことを欠かしません。
では、中高年ランナーの皆さんの場合はどうでしょうか。走り終わったらお風呂に入って、そのまま晩酌していませんか?「あっ!?」と思われた方もいるのではないでしょうか。先程も述べましたが、ジョギング程度でも、身体には負担が掛かっています。もちろんトレーニング強度によって負担は変わりますが、小さな負担でもしっかり回復せず蓄積すれば、怪我などのトラブルに繋がりかねません。せっかくトレーニングを頑張ってきたのに、レース直前で怪我なんていう事態になれば、やる気も失いますよね。
普段の練習後には、セルフマッサージやストレッチなどでケアを行い、月1回くらいは、専門のケア施設で、じっくり筋肉や関節のケアをすることもおススメです。
歯科医院や美容院に行くような感覚で、身体のケアも行うことも大事ではないでしょうか。特に年齢が上がるにつれて、定期的なケアは必要不可欠だと思います。 中高年ランナーは走るだけでなく、走る以外の部分にも時間を使うことで、この先も長く楽しくマラソンを続けることができますよ。
厚底シューズとランニング障害
~厚底ブーツの時代到来!鍛える筋肉は〇〇~
某有名スポーツブランドが、「厚底カーボンシューズ」を発売して以来、マラソン・ランニング業界に激震が走りました。それまでは、「軽くて薄い」が主流だったランニングシューズが、いつしか「厚くて速い」に代わってきています。
近年では中級者や上級者だけでなく、初心者向けシューズでも厚底モデルがたくさん出ており、マラソン業界でバズっています。
しかし、注意も必要です。「厚底カーボンシューズ」に搭載されている「カーボンプレート」はそもそも短距離用スパイクに使用されていた素材です。カーボンプレートをシューズに使うことで、より強い反発力を生み、スピードが出やすくになります。自然と反発力を得ながらスピードを出す、「短距離的な走法」が今の時代の走り方なのかもしれません。
そうなってくると、「短距離的な走法」に必要な筋肉を鍛えないと、当然故障しやすくなります。 その筋肉こそが「ハムストリング(太ももの裏の筋肉群)」です。マラソン・ランニングでも、当たり前に使う筋肉ですが、薄底シューズ時代は、太ももの前側の筋肉「大腿四頭筋」をメインで鍛えることが主流で、ハムストリングはあまり重要視されていませんでした。
しかし、近年の厚底シューズに対応しようと思うと、「ハムストリング」を鍛えなければ、故障の危険性が高まります。実際に、ハムストリングや大殿筋(お尻の筋肉)など、いわゆる地面を蹴り、前向きの推進力を生む筋肉を痛める中高年ランナーが多くいます。その方々はほとんどが厚底シューズを使用しています。これは、シューズの性能に身体がついていっていない可能性があります。
厚底シューズが気になっているけどまだ試したことがないという方は、シューズを買う前に、ケガをしないためにも、まずはしっかりとトレーニングが必要そうですね。
最後に
走っているときに痛みが出たら、まずは現状を把握することが大切です。何故痛みがでているのか?筋肉が弱いから?硬いから?ランニングフォームが悪い?など、自分の状態を知りましょう。
スリーウエルネスでは、体組成測定、姿勢測定などを行い、専門家によるアドバイスを実施。ケアやパーソナルトレーニングを身体の解剖学を熟知した医療国家資格(柔道整復師、理学療法士)を持つトレーナーが対応します。ひとり一人の状態、レベルにあったプログラムを作成し、安心してケア・パーソナルトレーニングを受けて頂けます。また、県下では数少ない筋膜リリース「ファシア・スリック・テクニック」や「INDIBA®」を組みあせた施術も実施しています。マラソンイベント出張出展した際には、大変好評いただいているケアプログラムです。
身体の不調を抱える中高年ランナーの方は、是非一度体験してみてください。 年を重ねても、それらと上手に付き合いながら、より長くより楽しいランニング生活を送りましょう。
スリーウエルネス柔道整復師 大塚