理学療法士が解説!四十肩・五十肩ってどんな病気?四十肩・五十肩の原因と予防
こんにちは。スリーウエルネス理学療法士の原田です。
10月に入り、季節がぐっと進み、特に朝晩に強い冷え込みを感じるようになりましたね。風邪にも気を付けたいですが、「冷え」によって引き起こされる関節の痛みにも注意したい季節です。中高年の皆さん、季節の変わり目に肩が痛むという経験はありませんか?年齢のせいかなと我慢している方も多いと思います。四十肩・五十肩という言葉を連想する方も多いと思いますが、四十肩・五十肩と普通の肩こりとはどう違いがあるのでしょうか?今回は四十肩・五十肩について深掘りしていこうと思います。
四十肩・五十肩と肩こりの違いとは?
実は、医療用語として「四十肩・五十肩」という言葉はありません。四十肩・五十肩というのは肩関節痛の総称です。医療的には「肩関節周囲炎」という疾患として取り扱われます。40歳代、50歳代を中心とした中高年に多く発症することから、俗に「四十肩・五十肩」と呼ばれることが多く、その名の通り、肩関節に炎症が起きて、痛みが出ている状態です。放っておくと徐々に肩の動く範囲が狭くなっていき、可動域に制限が出て、関節拘縮(かんせつこうしゅく)という関節が固まった状態になってしまいます。この固まった状態を凍結肩とも言います。
一方肩こりは、筋肉の血流障害などが原因で起こるため、痛みはあるものの関節が硬く動かなくなることはありません。
肩関節周囲炎の原因
肩関節周囲炎は40歳から60歳代を中心に全人口の3~5%が罹患するとされ、整形外科では代表的疾患の1つといえます。特に明らかな受傷起点がなく、自然発症的に経過を辿ります。思い当たるきっかけはないけれど、気づいたら痛くなっていたということです。
肩関節周囲炎の原因としては、関節を構成する骨、軟骨、腱などが加齢に伴い変性し、柔軟性が低下することで、炎症を起こし痛みが発生していると考えられています。肩関節の動きをよくする滑液包や関節を包む関節包が炎症により硬くなると、さらに肩関節の動きが悪くなります。 四十・五十肩とは、大まかに言えば、特に原因がはっきりしない中高年以降に起こる肩の痛みと運動制限をきたす症候群です。
どういう人がなりやすい?
原因がはっきりしない肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)ですが、近年の研究でなりやすい傾向の強い人=(リスクファクターの高い人)はわかってきています。
リスクファクターの筆頭は糖尿病です。特にインシュリン依存型糖尿病の方では肩関節周囲炎の有症率が高いとされています。また、甲状腺疾患や血中脂質異常、代謝・内分泌疾患、血液内科系疾患なども関与が高いとみられます。 また、病気以外にも生活習慣で肩関節周囲炎の有症率に関連があるとされているのが、「デスクワーク」です。全体的にみて肩関節への過負荷(使い過ぎ)というよりも、運動不足に関連するものが多いようです。コロナ禍でリモートワークが増えた方、運動不足気味な方は要注意ということですね。
肩関節周囲炎の症状と経過
肩関節周囲炎の経過は肩の痛みが先行して発症し、その後肩関節の可動域制限が進行するのが標準的です。基本的には自然寛解する疾患として考えられていますが、文献的には痛み、可動域制限の順で改善していくまで12~42ヶ月と長い期間を要するとされています。
痛みと可動域制限、これらは初めから同時に起こるわけではありません。肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)は炎症期、拘縮(こうしゅく)期、回復期の3つ病期に分けられます。
<安静にしていても痛い炎症期> 2~9ヶ月
安静にしていても痛みを感じます。夜、強い痛みのため眠れず目を覚ますこともあります。肩関節の拘縮はあまり進んでいませんが、痛みで肩が動かせなくなります。この時期は無理には動かさず、安静にすることが大事です。
<可動域制限がメインの拘縮期> 4~12ヶ月
安静時の痛みがなくなったら炎症期が終息し、拘縮(こうしゅく)期に入ります。痛みや眠れないほどの夜間痛は落ち着きますが、関節包が硬くなっていることが多く、最大限に動かしたときだけ痛みます。この時期に徐々に運動範囲を広げることが大事になります。
<可動域が改善してくる回復期> 6~9ヶ月
徐々に症状が改善してきて、可動域制限も回復してきます。運動時の痛みも消失してきます。積極的に運動・ストレッチをし、再発を予防することも大事になってきます。
治療法はそれぞれの病期で異なりますが、特に糖尿病を合併した方の予後は良くなく、治療を行っても痛みや関節の可動域制限が残存しやすいと言われています。
肩関節周囲炎改善のためには何をすればいい?
肩関節周囲炎はこれまで説明したように、明らかな原因が存在しない、肩関節の老化や機能低下を基に発症疾患です。
肩関節周囲炎の症状である可動域制限は日常生活動作に大きく影響を与えます。そんな関節の可動域制限を最小限に留めるには運動がとても大切です。
とは言っても、炎症期は動かすこと自体が難しく、無理に動かすと悪化させるおそれもあります。炎症期には無理に肩を動かさず、痛みのない姿勢を取ることが大切。寝ている際にはタオルやクッションを使用して安全で快適な姿勢を保持し、必要なら三角巾での固定をおこない痛みが出ないようにしましょう。
拘縮期は無理のない範囲で肩関節を動かしていきます。お風呂やホットパックで温めながらストレッチをすることも有効です。
回復期には痛みに注意しながら、積極的な運動を行っていきます。姿勢と肩の動きはお互いに影響し合っているため、背中が丸くなると胸や肩甲骨周囲の筋肉が硬くなり、肩関節の動きが悪くなります。痛みが落ち着いている回復期には全身のストレッチや運動を取り入れていきましょう。
まとめ
四十肩・五十肩について理解が深まりましたか?加齢に加え、運動不足も原因の1つです。無理のない範囲で、肩を動かすことが四十肩・五十肩の予防になりそうですね。
すでに四十肩・五十肩の症状が出ている方でも、スリーウエルネスでは、肩の痛みだけに注目するのではなく、その方の姿勢や生活背景なども考慮しながらトレーニングを行います。また、痛みの強い際はケアで痛みの緩和を行うこともできます。
痛みを我慢せず、予防・改善のためにもトレーニングを行いましょう!
スリーウエルネス理学療法士 原田